震災後の仮設住宅、見て泊まれる施設が開業 「床キンキンに冷える」

宮脇稜平
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 東日本大震災後に建てられた仮設住宅での暮らしを体験できる「3・11仮設住宅体験館」が、岩手県陸前高田市にでき、元住民が10日、訪れた人に初めて自らの経験を語った。伝えたのは「自分事」として、物心両面から災害に備えてほしいという思いだ。

 「壁が薄くて、隣の世帯がテレビで何を見ているかまでわかるんです」。同市に住む佐藤一男さん(56)は当時を思い出しながら、県外から訪れた大学生2人に語りかけた。

 自宅を津波で流された佐藤さんは、市内の避難所や別の仮設住宅を経て、2017年から約2年間、家族7人で旧米崎中学校のグラウンドに建てられた仮設住宅で過ごした。

 避難所に比べプライバシーは保てるものの、隣の話し声や足音が聞こえることや、壁が薄く寒さがつらかったことなどを約1時間かけて説明した。

実際に被災者が暮らした仮設住宅

 体験館は、震災で実際に被災者が暮らした仮設住宅で、当時と同じ旧米崎中にある。市内の一般社団法人「トナリノ」が、仮設暮らしの体験を通じて防災対策を考えてもらおうと、市の委託を受け今年10月下旬から公開を始めた。

 見学用の仮設住宅では、元住民から当時の暮らしを聞き取り、高齢者を含む3世代4人が5年間暮らした状況を再現した。

 室内には家電や机を置いたほか、「床がキンキンに冷える」「収納スペースがなく自分で作った」などの経験談を、ポップで貼った。別の住宅では実際に泊まれるようにしている。

 トナリノは語り部による解説もスタート。佐藤さんに依頼したのは、避難所や仮設住宅の環境改善のため、全国の自治体を回ってアドバイスを続けていたからだ。

 カキの養殖業を営んでいた佐藤さんは、震災をきっかけに防災の仕事をするようになった。今も各地で地震や洪水が相次ぎ、仮設住宅が必要になる状況が続いていることに危機感を募らせる。

 「誰でもこのような環境で暮らすことになる可能性はある。実際に仮設住宅を見て、物の面でも心の面でも、足りないものを探して備えてほしい」

 体験館の見学や語り部による解説には、事前の予約が必要。事務局のHP(http://311kasetsu.com/別ウインドウで開きます)から申し込む。(宮脇稜平)