建設現場の石綿被害、九州地方の原告ら52人が最高裁で国と和解

阿部峻介
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 建設現場でアスベスト(石綿(いしわた))を吸って健康被害を負った元作業員らが国と建材メーカーに賠償を求めた訴訟で、主に九州地方に住む原告と国との和解が13日、最高裁第二小法廷(菅野(かんの)博之裁判長)で成立した。国は原告らに謝罪し、被害補償として総額約3億5千万円を支払う。

 国と一部メーカーの賠償責任を認めた5月の最高裁判決後、最高裁で和解が成立したのは初めて。メーカー側は和解に応じていないため、第二小法廷は今後、メーカー責任について判断を示すとみられる。

 和解したのは原告53人のうち、石綿で肺がんなどになった福岡、熊本、大分各県の元作業員と遺族52人。最高裁判決の翌日に全国の原告団と国が和解基準を決めた基本合意に沿い、国は病状に応じて作業員1人あたり1千万円余りを払う。

 都内で会見した原告団副団長の石原律子さん(76)は夫を肺がんで亡くした。「2011年の提訴から10年かかり、(作業員本人の)原告はほとんどが亡くなった。生きているうちに(和解成立を)聞きたかったと思う」と振り返った。

 一審・福岡地裁は事業主に雇われた労働者に対する国の責任だけを認め、二審・福岡高裁は労働者に当たらない個人事業主に対する国の責任や、一定の販売シェアを持つメーカー4社の責任も認定していた。

建材メーカー各社との和解は……

 厚生労働省によると、5月の基本合意を受け、和解をめざす新たな同種訴訟が各地の地裁で続出。11月までに83件(原告約1400人)起こされ、国との和解が順次進んでいる。基本合意をふまえて裁判を起こさない人を補償するための基金創設も決まり、来年6月までに運用が始まる。

 一方、メーカー側の対応は鈍い。これまで被告となった約40社のうち10社の賠償責任が確定したが、和解の動きはなく、基金への拠出も定まっていない。基金法には、メーカーの補償を引き続き検討するとの条項がある。原告弁護団の山本一行団長は「国が和解して謝罪したという状況をもとに、企業にも和解を迫っていきたい」と話した。(阿部峻介)