イスラエル首相がUAE初訪問 米仲介で国交、イラン牽制の思惑も

伊藤喜之=ドバイ、清宮涼
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 イスラエルのベネット首相は13日、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビを訪れ、国政を取り仕切るアブダビ首長国のムハンマド皇太子と会談した。両国は昨年夏、当時のトランプ米政権の仲介で電撃的に国交を樹立したが、イスラエル首相のUAE訪問は初めてとなる。

 ベネット氏は会談前のUAEの国営通信の取材に、「私たちは預言者アブラハムの子孫だ」とユダヤ教徒とイスラム教徒の共通項に触れ、「(イスラエルとUAEの)2国間関係の進展が(中東)地域にとっても貴重な宝になる」と強調した。会談では、農業、食糧安全保障、再生可能エネルギー、先端技術といった経済関係の発展などについて話し合われたという。

 コロナ禍で期待ほどには進んでいない経済関係の強化に加え、この時期の訪問には別の理由もある。イスラエルと敵対するイランが米国と核開発をめぐる協議を続ける中で、UAEやサウジアラビアなどの湾岸諸国がイランとの関係改善を模索し始めたことだ。

 UAEのタフヌーン国家安全保障顧問は今月6日にイランを訪問し、ライシ大統領と会談した。一方、サウジは4月以降、イラクの仲介でイラン側と高官レベルで接触するなど、関係改善を探っている。中東への関与を低下させつつ、地域の緊張緩和を図ろうとするバイデン米政権の意向に沿った動きだ。

 とりわけUAEには古くから商都ドバイを中心に多くのイラン系企業が進出。貿易取引額は年間約140億ドル規模に達し、イランにとってUAEは世界で2番目の貿易相手国だ。

 イランと敵対するイスラエルはイランの核開発の進展に警戒感を募らせ、イランへの軍事攻撃の可能性に度々言及している。今回の訪問で、UAEとの関係を深めてイランを牽制(けんせい)する思惑があるとみられる。

 6月に退陣したネタニヤフ前首相は複数回にわたってUAE訪問を計画。しかし、新型コロナウイルス感染対策ロックダウン都市封鎖)などで取りやめになり、実現していなかった。

 一方、UAE―イラン関係を巡っては米国も神経をとがらせている。米財務省はUAEの銀行がイランへの金融制裁に違反する形でイランと経済取引している証拠があるなどとして、銀行への警告のため近日中にUAEを訪問する。これに対し、ガルガーシュ・UAE大統領外交顧問は「イランへの制裁はもう十分だ」と述べ、米国の方針に異議を唱えた。(伊藤喜之=ドバイ、清宮涼