日本酒を交流の架け橋に 台湾出身杜氏、ゆかりの米使う酒蔵立ち上げ

清水優志
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 台湾出身の杜氏(とうじ)・陳韋仁(ちんいにん)さん(41)が、海外へ向けた日本酒をつくるため、島根県出雲市斐川町で自身の酒蔵を立ち上げた。日本酒に魅了され十数年。戦前の台湾で広く栽培され、島根とも縁がある米を使い、日台の架け橋となる酒造りに挑む。

 11月29日、出雲税務署を訪れた陳さんに「輸出用清酒製造免許」が手渡された。日本酒製造は国内の需給バランスなどに配慮し、新たな免許交付が制限されていたが、今年4月から輸出拡大のため、海外向け専用の免許が認められるようになった。全国5例目で、中国地方では初の交付となった。

 陳さんは日本のアニメ文化などに興味を持ち、2008年に島根大に留学。学生時代に出会った日本酒の魅力にとりつかれ、卒業後は「獺祭(だっさい)」で有名な旭酒造(山口県岩国市)や李白酒造(松江市)で酒造りを学んだ。

 17年から取り組んできたのが、日本統治下の台湾で広く栽培された「台中65号」を使った酒造りだ。

 台中65号は、島根県の米「亀治」と兵庫県の「神力」を掛け合わせ、日本への輸出を目的に誕生した米。日本と台湾の文化や歴史を研究して存在を知り、自ら栽培を開始した。

「台雲酒造」名前に思い込め

 食用米のため、酒づくりに適した酒米と比べ、こうじ造りが難しい。だが、食文化の交流の象徴として使用にこだわる。これまでに各地の酒蔵を間借りして酒を造り、「台中六十五」の銘柄で台湾などへ輸出。すっきりとした味わいが評価され、国内外の品評会でも受賞を重ねてきた。

 今回立ち上げた酒蔵の名前は、台湾と出雲から一字ずつとった「台雲酒造」。初年度は「台中六十五」のほか、兵庫県産の酒米を使った銘柄「台雲」も醸造する。日本酒は炒め物をはじめ幅広い台湾料理にも合うといい、台湾などの酒販店や料理店に卸す予定。国内では購入できない。

 今後は海を越えて出雲に観光客を呼び込み、醸造を体験してもらう計画もある。陳さんは「お酒を通じて日本と台湾の交流に役立ちたい」と話す。(清水優志)