「このままでは収入がない」 広がる軽石におびえる漁師たち

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稲野慎
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 小笠原諸島の海底火山の噴火で発生した大量の軽石は沖縄県や奄美群島の海域などで漂流を続け、船の故障を恐れて出漁できない漁師らは被害への不安を募らせる。漂流の範囲も拡大しており、一部は伊豆諸島(東京)の海域まで到達し、鹿児島県本土近海に今月中に接近する可能性がある。

 12月初旬、与論島(鹿児島県与論町)西部の茶花地区の漁港は、漁船10隻ほどが港につながれたまま。いつもは透明な港の海は軽石で茶色く濁っていた。

 島では例年、この季節はソデイカ漁が盛んだ。地元の与論町漁協によると、年間の水揚げの約6割は11月に漁が解禁されるソデイカが占める。だが今は7割ほどの漁船は出漁を見合わせる。軽石が船のエンジンに吸い込まれると故障する可能性があるためだ。

 60代の漁師は「このままでは収入がない」と話す。1カ月ほど休漁した後の11月中旬、約60キロ沖合で5日間の漁を行った。そこで、大量の軽石が海を漂うのを目の当たりにした。

 「軽石が川のように帯状になっていた。軽石を避けて船を動かすことはできない状況。エンジンが壊れたら、と思うと不安だった」。毎晩、船の吸水口のフィルターを分解し、軽石を取り除く数時間の作業を続け、体力を消耗した。「この状態が続けば、もう漁に出ることはできない」

 別の漁師は11月中旬に沖合で軽石が船に入り、エンジンの温度が上昇したという。「海上で動けなくなると思って怖かった。ゆっくりゆっくり港に戻った。吸水方法など船の改良も考えるが金もかかる。今後のことは分からない」と肩を落とした。

 漁協の箕作広光参事は「与論の漁業にとっては最大の危機。先が見えないのが苦しい」。鹿児島県のまとめでは、今月7日までの1週間に奄美群島を中心に132隻が出漁を見合わせた。

 美しい海と白い砂浜で知られる与論島だが、軽石が大量に残る砂浜がいくつもある。観光名所の大金久海岸でも、幅5メートルほどの灰色の「軽石の帯」が500メートル以上も続く。住民らがボランティアで取り除いてきたが、「取っても取っても軽石が風や潮の具合で(海から)浜にあがってくる」と除去活動に参加した中年男性は嘆いた。県も2日からこの海岸の軽石の撤去作業を始めた。

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