巨人・高梨雄平の「性に合ってない」こと 変則左腕が語る苦しい1年

松沢憲司
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 高い壁に挑んだ移籍2年目は、悔しい結果に終わった。巨人の変則左腕・高梨雄平。シーズンを通してブルペンに居続けたものの、残した成績は、めざしていた高みには遠く及ばないものだった。

 14日の契約更改は、800万円増の7800万円(金額は推定)でサインした。

 新人時代から続くシーズン40試合以上登板は、5年に伸びた。55試合は自身2番目に多い。20ホールドも、昨季に続く2番目の数字だ。初めてオールスターにも出場。

 「1年を通して1軍にいたこと、(出番に備え)肩をつくった回数なども評価してもらった。このご時世にありがたい」と語った。

 一方で、防御率はプロ入り後最悪の3・69。「防御率0点台、30ホールド」という開幕前の目標には到達しなかった。

 元々、ここまで高い目標を設定するタイプではない。高いハードルをあえて掲げたのは、一つ上のステージに立てるように、という思いからだった。

 背中を押したのは、兄弟のように仲がいい楽天の守護神・松井裕樹。「めざさないと(防御率0点台は)出せないよ」と言われたのがきっかけだった。

 シーズン初登板から14試合連続自責点なしと、上々の滑り出しだった。だが、夏場に暗転する。6月終了時点で登板試合が30試合に上るなど出番が多く、疲労は蓄積。制球を乱し、失点する場面が増えた。

 7月半ばから約1カ月あった東京五輪による中断期間を活用し、フォームの見直しやプレートを踏む位置など、細かな調整に腐心した。

 さらに、29歳は自分の中で大きな方針転換をした。

 同僚のブラジル人抑え投手・ビエイラから「数字を気にしないほうがいいんじゃないか?」と助言され、登板試合数さえ見ないようにしたのだ。

 「数字を意識してシーズンに入ったけど、それが性に合ってなかったのかな。やってみたから、合わないことが分かった。そこは、マイナスだったとは思わない」。9月に、そう漏らしていた。

 一時は本来の安定感を取り戻したように見えたが、結局、不安定さをぬぐえぬままシーズンが終わった。チームも3連覇を逃し、3位に終わったこの1年。

 「球速は自己最速を出したし、自分にもこういうピッチングができるんだ、という試合はあった。でも、逆にどうにもできないというくらいひどい日もあって。不安定だった」と総括した。

 「コンディションが整っていることが重要だと、しみじみと感じた。丁寧に積み上げないといけない」。節目の30歳を迎える来季へ、そう誓った。(松沢憲司)

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