第8回保育士らの賃上げ、欠けていたのは 配分阻む壁、手つかずのまま

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石川友恵
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 給料を上げようとする取り組みはありがたいけど、なにか現実が見えていないような――。来年2月から保育士らの賃金を3%程度(月額9千円)引き上げる方針を掲げる岸田政権。ですがそれは現場の要望に根ざしたものなのでしょうか。今回は特別編として保育士や専門家の声をもとに実態を探りました。

年収300万円台 将来見えず 男性保育士

 東京都内の認可保育所で3歳児のクラス担任をする男性保育士(37)。「3%賃上げ」のニュースを聞いても、いまの長時間労働や賃金の低い状況が変わることへの期待はもてなかったという。

 1人で15人の保育を担当しているが、人手が足りないのがつらい。着替えの時間、突然走り回る子がいると、その子を追いかけて対応しないといけない。その間にほかの子がつられて動き出してしまうこともある。

 食事の時間は子どもたちのアレルギーへの対応に神経をとがらせる。食事メニューはそれぞれのアレルギーを考えて提供し、給食調理員とともに間違いがないかダブルチェックするが、食べるときはみんな同じ部屋だ。ほかの子に提供されたものを誤って食べてしまわないよう、できるだけ周りの子と距離をあけて食べさせるが、「万が一」が起きないよう絶えず注意して見守らないといけない。

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保育現場では人手不足や待遇面の低さが問題となっている=岡山市内、吉川喬撮影

 「成長のスピードはそれぞれ。15人を1人で見るのは難しい」

 国の保育士の配置基準は、例えば3歳児の場合、子ども20人につき1人。15人に対して1人の配置は、「手厚い体制」とされて加算がつく。それでもすべてを目配りするには十分でなく、「安全を100%守れない」と思うことがある。今の配置基準は1998年につくられたもの。「時代に合っているのか」と疑問を感じる。

 日中は事務作業をする時間はない。子どもたちが帰り出す午後6時ごろから、保育の記録など報告書を作成したり、クリスマスをはじめとした季節ごとにつくる工作キットや行事の準備をこなしたり。1日12時間以上働く。それでも残業代などを含めて手取りの月収は23万円程度にすぎない。ボーナスも入れた年収は約350万円。「働いても報われない」と辞めていく保育士は周りにも多い。

 前職の幼稚園教諭も合わせ…

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