新潟県の地震被害想定24年ぶり改定 どう備える?

高橋俊成
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 新潟県内で起きる可能性がある大地震による被害想定が24年ぶりに改訂される。最新の科学的知見を踏まえた結果、最も深刻なケースでは、死者数はこれまでの想定の6・6倍に相当する約7900人に上る。どのように備えればいいのか。(高橋俊成)

 死者7920人、建物全壊17万1244棟、避難者最大47万1386人――。

 9月、県による地震被害想定の最終報告書案が示された。死者数は、1998年に作られた想定の約1200人(下越地方)の6・6倍にあたる。

 冬の深夜、強風時に、新潟市の沖合から長岡平野の西縁にある「長岡平野西縁断層帯」を震源とするマグニチュード(M)8・0規模の地震が起きた場合、死者数が最大になると見込む。

 今回の改訂では、98年以降に政府の地震調査研究推進本部の調査で明らかになった断層を含む内陸6、海域3の計9断層・断層帯による地震を想定。季節や時刻、風の強さを加味し、中越地震(2004年)や中越沖地震(07年)、東日本大震災(11年)などでの被害の実態を踏まえた。

 今回想定した地震では、いずれも「冬の夕方・深夜の強風時」に被害が大きくなることが分かった。夏の想定と比較すると、積雪がある状態で揺れることで建物倒壊が増え、死者数は1~3割ほど、全壊棟数も1~5割ほど増える。「積雪により救助活動が遅れた場合」や「スキー場での停電でリフト乗客が取り残される場合」など冬季にはさらに被害が拡大するシナリオも示された。積雪と揺れによりカーポートが倒壊した今年2月の福島県沖地震での事例など、直近の地震で生じた被害も例示された。

 また、内陸地震だけでなく、冬の深夜に粟島付近の海底にある断層を震源とする地震が起きた場合、死者約2千人のうち、最大約800人が津波で死亡するとの数字も示された。

 改訂作業にあたった検討委員会委員長の大塚悟・長岡技術科学大教授(地盤工学)は「前回は断層の調査が不十分な部分もあったが、今回は実際に所在が明らかになった断層を用い、デジタル技術の進歩も生かして詳細な想定ができた。近年、各地で起きている震度6以上の地震が、新潟で起こらないとは言えない。想定見直しを機に、各市町村は緊張感をもって備えてもらいたい」と話している。

県、システム開発 市町村に配布へ

 県が近くまとめる最終報告書は、各市町村による防災計画の策定や避難訓練など減災に向けた取り組みに生かされる。今回の想定による被害想定や危険性を可視化するために、県は各市町村が様々な条件を設定し、震度分布などを確認できる「地震被害想定システム」を開発し、今年度中に全市町村に配布する。

 9の断層・断層帯を選び、時間帯や風速を設定。「震度分布」「液状化危険度」など約30項目の被害の詳細を表示。震度は250メートル四方に色分けして地図上に示し、人的被害は地区ごとに死者数や重軽傷者数を算定。電力などのライフラインは、復旧までに要する期間ごとに被害軒数を試算する機能を備えている。

 県防災企画課の宗村信明課長は「見やすさと使いやすさを考えて開発している。想定を実践的な訓練や、有事の際の対応に生かしてほしい」と話す。

李仁鉄・災害ボランティアネット理事長

 今回の被害想定をどのように生かしたらいいのだろうか。中越地震や東日本大震災など多くの災害現場での活動経験がある李仁鉄・にいがた災害ボランティアネットワーク理事長は「想定見直しを地震への危機感を持つきっかけにしてほしい」と話す。

 李さんは「最悪の想定をしておけば、それを下回ったとしても対応できる」と今回の見直しを評価。そのうえで「想定があっても、正しく理解されていなければ意味がない」とも指摘する。例えば、想定で危険度が上がった地域には、より強いアラート(警告)が必要だという。

 土砂災害の現場で、被災者が、自分の自宅が「ハザードマップ」で危険度が高い地域に含まれていることを十分に理解しておらず、後悔する声を聞いたことがあるという。市民の理解が進むには、行政やメディアによる分かりやすい発信が必要で、チラシや動画、SNSなど「住民目線で想定が分かるような工夫を」と強調する。

 複合災害に対しては、家具の固定や、ハザードマップや備蓄品の確認など「まずは基本的な地震対策ができているかを再確認することが減災につながる」。新たな想定をきっかけに、「日ごろの雑談などで地震への備えを家族や友人と共有できるようになれば理想的だ」と話している。