馬毛島に大牧場を 宮本常一を熱くした青年たちの夢とその後の現実

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編集委員・藤生明
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現場へ! 馬毛島

 「馬毛(まげ)島に大牧場の夢」

 鹿児島県西之表市の広報誌にそんな見出しが躍ったのは1966年秋だった。北海道で酪農を学んだ青年5人がその春、馬毛島に移住。「種子島畜産組合」の看板を掲げ、ホルスタインの子牛137頭を放牧し酪農を始めた。広報誌には、全島を牧場化して1千頭を飼育する大規模な経営をめざす、とあった。

 青年たちの情熱に胸を熱くした民俗学者がいた。全国の島々の生活を記録して歩いた宮本常一(つねいち、1907~81)だ。その4年前に馬毛島を訪ね、目の当たりにしたのは島民らのどん底の生活だった。何とか、この島を開拓入植の成功例に変えられないものか。そんな思いが新たに移り住んだ青年たちへの期待につながっていた。

 開拓入植とは終戦後、離島や山間地などへの誘導政策だった。外地からの引き揚げ者の急増、食糧難などを乗り切るために政府が打ち出した。馬毛島にも約100戸が移住、サツマイモとサトウキビ栽培で生計をたてようとした。

 ところが、酸性でやせた土壌…

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