ラオウ破顔、おびえる日々に終止符 非通知着信に「びびったことも」

大坂尚子
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 プロ野球オリックスの杉本裕太郎外野手(30)が16日、大阪市此花区の球団施設で契約更改交渉に臨み、5600万円増の7千万円でサインした。「思ったより高くて、ニコニコではんこを押しました」と満面の笑みを浮かべた。

 昨季までの5年間で出場76試合、計9本塁打の右打者は今季、32本塁打を放って初の本塁打王を獲得。いずれもリーグ3位の打率3割1厘、83打点をマークして、4番として25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。

 30歳になって勝ち取った大幅アップにも、「特に欲しいものはないので、(好物の)パンケーキやクレープを食べに行こうかな」。(金額は推定)

外国人並みの飛距離 それでも…

 年俸の大幅増を勝ち取り、笑顔が絶えない会見で、オリックスの杉本裕太郎が真顔になった。

 過去のオフシーズンについて問われた時だ。

 「戦力外通告の時期になると、電話を気にしていた。非通知の着信があり、びびったこともあった」

 おびえるのも無理はない。

 杉本が徳島商高、青学大JR西日本をへてプロのキャリアをスタートさせたのは2016年。即戦力とみなされる社会人出身者は、プロでの「猶予期間」は短い。

 ドラフト10位と下位で指名されたのだから、危機感はより強かっただろう。

 昨季までの5年間で放った本塁打はたったの9本。4番に座ったこともあるが、打撃が粗く、好不調の波が激しかった。

 入団時、「外国人並みにボールを飛ばせる。ボールにさえ当たれば」(牧田勝吾・現編成部副部長)との評価を受けていた。

 30歳を迎えた今季、力を抜いて芯で捉える打撃を覚え、やっとその才能を花開かせた。

 「まだ1年間1軍で出ただけ。右翼のポジションは誰にも渡さないつもりで、来季も1年間頑張る」

 会見ではやはり真顔で力を込めた。

 記者が球団担当だった2年前、昇格したのにたった2日で2軍に落とされたことがあった。

 「考えすぎないように」

 「もっと勉強しないと」

 焦りからだろう。本来は豪快なはずのスイングが、小さく、窮屈に見えたこともあった。

 戦力外通告の時期に、電話におびえずに過ごせたのは、今年が初めてだったそうだ。

 一時の評価にとらわれず、長所を消さず、努力する大切さを、遅咲きの4番打者が教えてくれた。(大坂尚子)