水田で身動きできず、母娘で必死に 後で気づいた「小学生の時の…」

屋代良樹
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 水田で身動きが取れなくなった高齢者を救助したとして、熊本県警は、菊陽町の事務職員小原宣子さん(52)に感謝状を贈った。高齢者は、幼い頃から知る人だった。

 10月31日午前3時ごろ、自宅で就寝していた小原さんは、裏手の水田から物音がするのを聞いた。不審に思って窓を開けると、「誰か助けて」という女性の甲高い声が飛び込んできた。同居の長女(18)を起こして警察と消防に通報させ、小原さんは1人で畑に出た。

 菊陽バイパス(国道57号)から折れた県道沿い。周囲に街灯がなく、小原さんは懐中電灯と携帯電話の明かりを頼りに、声がする方へ向かった。数分後、泥水がたまった水田に横たわる女性を見つけた。顔から足まで泥水につかったためか、水田から抜け出せない様子で、必死に顔を上げて助けを求めていた。

 「とにかく助けないと」。小原さんは草履を履いたまま水田に入った。女性の両脇を抱えてなんとか立ち上がったが、自分もひざ下まで泥水にはまり、動けなくなった。後ろにあぜがあり、女性をひざの上に乗せて座った。

 長時間泥水につかっていたためか、女性の体が徐々に冷たくなった。娘にタオルを持ってきてもらい、後ろから女性を抱きかかえながら、「お名前は」「どこからきたの」と話しかけ続けた。約20分後、警察と消防が駆けつけ、女性と小原さんを引っ張り上げた。

 大津署によると、救助されたのは菊陽町に住む80代の女性。認知症があり、同日午前2時ごろに女性の家族から行方不明の届け出があった。署は女性が水田に迷い込んだとみている。その後、病院に搬送されたが、けがなどはなく、当日中に帰宅した。

 小原さんは救助した後、女性が、小学生時代に通った雑貨屋の店員だったことに気づいた。文房具を買いに行くと、「おつかいかね」と話しかけてくれたという。成人して交流はなくなっていたが、高校生の2人の子も保育園児のころから知る女性だった。

 県警は人命救助をたたえた。大津署で6日、感謝状を受け取った小原さんは「近くで人が困っていたので助けました。たまたま知っている方でしたが、どなたであろうと、命を落とされなくてよかったです」と話した。(屋代良樹)