「○○大学でセクハラ」「教員を処分」――。
30代の女性は4年前、部屋で1人、スマホをいじっていた。ネットニュースの見出しを見て、体が固まった。自分が1カ月前まで、大学院生として通っていた東京都内の私立大学の名があった。
うそ、ばれた?
どこから漏れたの? 何を書かれたの?
頭の中が不安でいっぱいになり、動悸(どうき)が激しくなった。
おそるおそる記事を開くと、自分が通っていた学部とは別の学部の話だった。
教員が学生を食事や映画に連れていき手をつないだため、セクハラで懲戒処分になった、という内容だった。
よかった。自分のことじゃない。最初は、そう思った。
でもなぜか、その記事から目が離せなくなった。気づけば数十回、繰り返し読んでいた。
その10日後、女性は意を決して大学のハラスメント防止室に電話をかけた。
大学で指導者の男性教員からハラスメントを受けても、女性研究者の多くは我慢している現実があります。勇気を出して大学の相談室に訴えても、立場の弱さもあって、適切な対応が受けられるとは限りません。こうした状況は、理系だけでなく、文系の現場でも起きています。
大学院に入学するおよそ半年前。院試を受けてすぐのころから、女性は指導教員となる男性教授からパワハラ、セクハラを受けた。
入学前から講義に出るように言われ、エレベーター内や飲み会の席などで、肩や背中を触られた。
短パンや短いスカートをはいていると、足元を見つめられた。
大学院で学ぶことは長年の夢だったので、多少の苦しいことは我慢しようと、1年以上、笑って耐え抜いた。
教授から性的な対象として見られていることを認めるのが嫌で、現実逃避していたのかもしれない。
「これは一線を越えている」
女性にとって決定的だったの…
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