野菜くずは堆肥に ドイツ人が立ち上げた「循環型」宅配

近藤咲子
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 【宮城】有機野菜を家庭に届けつつ、そこから出る生ゴミを回収して堆肥(たいひ)に変える。そんなベンチャー企業が仙台市内にある。ゴミを循環させる仕組みが作れないか――。きっかけは、日本をたびたび訪れるドイツ人デザイナーの驚きだった。

 11月25日午前、仙台市青葉区にある鉄筋コンクリート2階建ての民家の一室で、ベンチャー企業「土帰(どき)」の3人が野菜を箱に詰めていた。赤タマネギやユズ、柿など約1キロを紙袋に分け、床に並べた箱に入れる。麻ひもで封をし、配送業者に渡す。

 近郊で有機農法に取り組む農家の野菜を週1回、近くの個人宅に届ける、だけではない。「土に帰る」という名の通り、循環型のサービスが売りだ。

 野菜からでた生ゴミは、その翌週、箱とともに回収。そのための袋も入れてある。生ゴミは、提携する市民団体「仙台生ごみリサイクルネットワーク」(同市太白区)に持ち込んで、堆肥にしてもらって近隣住民に無料で配る流れだ。

 昨年夏から利用する東北大災害科学国際研究所の助教、ユリア・ゲルスタさん(34)は「生ゴミを回収してくれるのも魅力だけど、ピンク色のカブやマコモダケなど珍しい野菜が届くのも魅力」。レシピを探すのが楽しいという。

 サービスを始めたのは、ドイツ在住のデザイナー、レナ・フリッチェさん(25)だ。

 初めて日本を訪れた2016年、都内でスーパーに並ぶ野菜がポリ袋に入れられているのを見て驚いた。「袋が多すぎない?」。ドイツだと、野菜は包装されずに並んでいる。しかも、家庭で出た「生ゴミ」をリサイクルする仕組みがないのも衝撃だった。「畑の養分になるのに」。これがきっかけだ。

 18年に仙台市内に移り住み、ポスターなどのデザインの仕事をしながら、県内の野菜直売市を訪ねた。そこで出店農家に「野菜くずが堆肥になって畑に戻る」という事業の狙いを説明して回り、2軒との提携にこぎ着けた。SNSなどで知人たちに利用を呼びかけ、20年7月、8人の顧客を抱えて事業を始めた。

 環境負荷を抑えようと、野菜の梱包(こんぽう)にも古新聞紙や紙袋など「土に帰る」素材を使う。もとは段ボール箱を使っていたが、より長く使えるよう、耐水性のある再生紙で出来たふた付きの箱に替えた。

 コロナ下での事業開始が追い風になり、SNSや口コミで顧客は増えた。「直売市を開けない農家と、買い物に行けないお客さんをつなげられた」とレナさんは言う。今年6月の国連開発計画(UNDP)の報告書で、コロナ下で苦しむ農家と消費者をつなげた好例として取り上げられた。

 ただ、今年に入って売り上げが伸び悩む。ここ数カ月、注文は週10箱を下回ることも。箱の種類を三つに増やすことや野菜のオンライン販売などを検討している。

 レナさんが8月に一時帰国した今、活動を支えているのは約10人のボランティアたちだ。半数以上は東北大学の留学生だという。

 同大大学院で国際政治と持続可能な開発を研究する修士2年のカミラ・イダルゴさん(28)は、3カ月ほど前からボランティアとして参加。「地元のゴミ問題の改善に取り組めて、とても良い経験になる」

 土帰がこれまでに回収した生ゴミは170キロを超えた。現在、試験的に自前での堆肥作りにも取り組んでいて、軌道に乗れば生産農家へ配ろうと考えている。

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 配達区域は仙台駅から半径7・5キロ。1回当たり1箱2500円(税込み)で、地域ごとに500~1千円の配送料がかかる。問い合わせは土帰(contact@dokiearth.comメールする)へ。(近藤咲子)