個人事業主の安全対策、契約先企業の義務に 厚労省が省令改正の方針
建設、製造などの現場で働く「一人親方」らフリーランスの個人事業主を、アスベストや放射線などから守るため、厚生労働省は、請負契約の相手企業に安全対策を義務づける方針を固めた。アスベスト被害をめぐる訴訟で、企業に雇われている働き手だけでなく一人親方も保護対象にすべきだ、と最高裁が判断したことを踏まえた。
厚労省の審議会で詰めの議論に入っており、労働安全衛生法に関わる約10の省令を年度内に改正する方針だ。これらの省令は、アスベストや放射線、有機溶剤などの取り扱いを定めている。改正の影響は建設、運送、製造、舞台制作などの個人事業主やその契約企業に幅広く及ぶ見込みだ。
労働安全衛生法とその関連省令は、有害物質などを扱う企業に対し、排気や警報などの装置を設けることや、マスクなど保護具の使用、危険な場所への立ち入り禁止や避難といった対策を義務づけている。違反した場合には、懲役刑や罰金刑もある。
ただし、現在の保護対象は、企業に雇われている労働者に限られている。
省令の改正で、同じ現場で仕事を請け負っている一人親方ら個人事業主や、一緒に働くその家族にも同じ安全対策をとるよう契約企業に義務づける方向だ。資材の搬入や警備などの出入り業者にも義務づける。
契約企業に一人親方らへ命令する権利はないため、マスク着用などは必要性の周知を義務とする。
アスベスト訴訟で最高裁は5月、一人親方のアスベスト被害について国と建材メーカーの責任を認めた。同じ現場で働いていて危険性が同じなら、一人親方も労働安全衛生法の保護対象と考えるべきだ、との判断だった。一人親方の家族や搬入業者、アスベスト以外の物質なども見渡した省令の改正は、最高裁の判断の趣旨を汲(く)もうとするものだ。
建設業の一人親方は、労災保険の加入者だけでも2018年度末時点で60万人近くいる。(橋本拓樹)
フリーランスの安全網整備を
厚生労働省はこれまで、労働…
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- 【解説】
今年5月に出された、建設アスベスト訴訟の最高裁判決による大きなインパクトです。何らかの影響があるだろうとは予想していましたが、意外に早い動きで、広範囲の改正になりそうです。 訴訟で国は、「一人親方」に対する責任を否定していました。「
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