飯塚繁雄さんが語っていた高齢の不安 拉致被害者の家族が抱く不信感

堤恭太
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 北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)の前代表で拉致被害者田口八重子さんの兄、飯塚繁雄さん(83)が18日未明、埼玉県上尾市の病院で死去した。近年、県内の被害者の家族が相次いで亡くなっている。高齢化が進むなか、解決への糸口が見いだせない状況が続く。家族からは「我々が老いてこの世からいなくなるを待っているのだろうか」といった悲痛の声が聞かれる。

 川口市では、2004年に「拉致問題を考える川口の会」が結成され、政府認定の拉致被害者の田口さんのほか、警察庁が拉致の可能性を排除できないとした特定失踪者4人の計5人の家族らが帰国に向けた運動を続けている。

 しかし特定失踪者のひとりである藤田進さん(65)の父、春之助さんは19年に95歳で死去した。井上克美(かつよし)さん(71)の母、イトノさんも昨年8月に96歳で世を去った。5人のうち、親で存命なのは佐々木悦子さん(58)の母、アイ子さん(82)だけになっている。

 アイ子さんは、飯塚さんの死去の報に「今年1月の集会の時、飯塚さんと一緒に壇上から降りる際、『これ以上続けられるかどうか』と話していたのが気がかりで心配でした」とショックを受けていた。「飯塚さんとは同い年(学年)なんです。私も医者通いで薬は飲んでいるし、腰も痛い。一緒に運動していた人も高齢で顔を見せなくなった人が多い。それでも悦ちゃんが帰ってくるまで署名活動を続けます」と気丈に話した。

 飯塚綾子さん(74)は、飯塚繁雄さんの弟で田口さんの次兄の進さんと結婚した。だが、進さんも再会を果たせずに14年に72歳で亡くなった。綾子さんは「旅行に行くときもチラシと署名簿を持っていた。泊まった旅館に署名簿を渡して協力してもらっていたんです」と振り返る。「繁雄さんが亡くなって7人兄弟のうち3人が世を去った。政府は私たちがこの世からいなくなるのを待っているのでしょうか」と怒りをぶつける。

 川口の会の前原博孝代表は「飯塚さんは家族会、私は川口の会の代表という立場で頑張ってきた。こんなに早く亡くなるとは思わなかった。1万6千人分の追加の署名を一緒に政府に届けようと思っていたのに」と嘆いた。(堤恭太)