小山田圭吾氏が辞めリミット30時間 五輪音楽監督のパニックと自信

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聞き手 編集委員・後藤洋平
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 東京五輪の開閉会式と、パラリンピックの開会式で音楽監督を務めたDJ・プロデューサーの田中知之氏(55)が朝日新聞の単独インタビューに応じた。開会式冒頭の楽曲を担当していた小山田圭吾氏が開幕直前に辞任し、急きょ田中氏が差し替えの曲を約30時間で制作したことも明かした。「過呼吸になった」と振り返る当時の壮絶な状況を、詳細に解説した。

「何百億も使ってこの程度か」の声に

 ――田中さんがDJ・選曲家だからこそ、実現出来たことはありますか。

 本来であれば、きちんと音楽の教育を受けた方がこうした大役を任されるべきだったといまだに思います。しかし今回に関しては延期、そして続くコロナ禍という特別な状況下での五輪でした。

 僕が加わってから最初の打ち合わせで言われたのは、「本来であれば全曲オリジナルで作るべきだが、今回は特別です。正直に言えば、従来あるコンテンツ(曲)を借りて手を加えたりとか、既存曲を使うのが70%。30%はオリジナルで作るべきものを作りましょう」という指針でした。

 そうであれば、クラブDJや選曲家として活動してきた私のような人間でも、やる意義はあるかなと思ったのです。「全体の予算はロンドン五輪の開会式の予算よりも2桁違う」という話も耳に挟みました。

 開会式の後、世の中の少なくない人たちが「あの式典で何百億円ものお金を使って、この程度か」という怒りをSNSなどで発信していました。現実は、全然違います。そうした事実を、ほとんどの人が理解していないし、メディアが積極的に報じてくれることもなかった。むしろ、匿名で厳しいことを発信した一個人の意見を、力のあるメディアが抽出して取り上げ、それが拡散していくという状況だと僕は感じましたし、更にはそうした、事実に基づかない発言を他のメディアも追随する状況も目の当たりにしました。

 次々と色んなことが起こりす…

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    野村周平
    (朝日新聞スポーツ部記者=スポーツ行政)
    2021年12月22日11時54分 投稿

    【視点】 五輪開会式を巡る混乱の中で、組織委員会担当記者の私は振り回されるように次々と起こる事態の対応に追われました。  制作の当事者の一人である田中さんが感じたように、SNSによって増殖された世論という名の暴風雨の中で、冷静な視点を保つことがで