少尉「止めぬと斬るぞ」 戦争末期、憲兵が残した住民紛争の極秘記録

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編集委員・伊藤智章
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 愛知県小坂井町(現在は豊川市)の住民が大戦末期、農地を買い上げて造られた軍需工場に反発し、集団で「紛争」を起こしたという記録を、愛知県春日井市の金子力さん(71)が見つけた。憲兵司令官(東京)が陸軍首脳に宛てた報告で、専門家によると、戦時下の住民の抗議活動を記した公文書は珍しいという。

 金子さんは元中学教諭で、市民団体「春日井の戦争を記録する会」の代表。国立公文書館アジア歴史資料センターのデジタル公開資料で見つけた。

 公文書は1945(昭和20)年3月23日付で、憲兵を管轄する陸軍の大臣や次官、局長ら首脳宛て。「新設軍需工場買収用地ノ使用不適切ニ基ク地元民心悪化事例ニ関スル件報告『通牒(つうちょう)』」と題し、表紙に「極秘」の判が押されている。5ページにわたって経緯を記している。

 それによると、軍の命令で旧住友金属工業が43年、214ヘクタールの軍用機材料工場用地の買収を計画。地主の不満を押し切って買収したのに、同社は33ヘクタールを放置して荒廃させ、果樹園も経営した。鉄道引き込み線や駅建設のために道路を遮断したことなどもあり、住民は「反感」を募らせていた。

 紛争は45年3月9日に起き…

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