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医療的ケア児 保育園に本格通園 長門

寺島笑花
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 たんの吸引や人工呼吸器などの医療的なケアが日常的に必要な3歳の女児が、今月から山口県長門市の市立みのり保育園に本格的に通園を始めた。11月に入園し、慣らし保育を続けてきた。市内の公立保育園で医療的ケア児を受け入れるのは初めてで、市側は施設の改修など昨年から準備を進めてきた。

 通園を始めたのは坂田文乃ちゃん(3)。「チャージ症候群」という難病を抱え、24時間の人工呼吸器や、チューブから栄養をとる経管栄養などが必要だ。

 今月17日、保育園では月に一度の避難訓練があった。放送を合図に担当看護師が、文乃ちゃんを抱きかかえてベッドの下に潜り込んだ。「泣かなくなったね、がんばったね」とほほえみかけると、文乃ちゃんもにっこり笑い、両手を広げてパチパチと拍手した。停電時でも呼吸器や加湿器を稼働させるため、園には家族が用意した蓄電池が常に備えられている。

 文乃ちゃんはこれまで市内に受け入れ先がなく、父親の繁洋さん(41)が仕事を辞めて在宅でケアしていた。受け入れにあたって市は今春、園で働く看護師2人を雇用。緊急時の対応マニュアルを整え、10月には新たに水道を備えた専用の部屋を設置。新型コロナウイルスなどの感染症対策や安全面を考慮して、文乃ちゃんは看護師2人と主にこの部屋で過ごしている。

 天気の良い日は園庭に出るといい、「お友達みんなが寄ってきます」と看護師。11日には踊りの発表会があり、文乃ちゃんは一緒に練習してきた2歳児クラスの園児とステージに上がった。父の繁洋さんは「小さい頃から知ってもらうことで、難病を抱える子が身近にいることが当たり前と感じてもらえたら。文乃が過ごせる場所がまたひとつ増えてうれしい」と話す。

 新たに見えた課題もある。園を利用するには保育の必要性を市に認定してもらうことが条件で、繁洋さんは今回就労する必要があった。同居する親族らの介護や看護は認定の理由になるが、文乃ちゃんのケアは理由として認められなかった。繁洋さんは「一番しんどいのは夜間のケア。昼間に働かなければならないのはきつい部分もある。柔軟に対応してもらうことで、親が就労を選択できるようになれば」と話す。

 繁洋さんは今月、自宅で「子育てサロン」を立ち上げた。同じような悩みをもつ親の相談や手助けをしていく計画だ。「文乃の人生はこれからも続くし、新たに生まれるケア児もいる。周囲の人たちと協力しながら、障害の有無にかかわらず多様な人が住みやすい地域をつくっていきたい」(寺島笑花)