「ワニの刺し身」は淡泊な味わい 海から離れた地元のごちそう

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比嘉展玖
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 中国地方の「おへそ」に位置する広島県三次市では、明治期から正月などのハレの日に、「ワニ」を刺し身で食べてきたという。山間地域に古くから伝わる「ごちそう」を訪ねた。

 広島市中心部から車で約1時間半。中国自動車道の三次インターチェンジを降りて県道を走っていると、「ワニ」と書かれた大きな看板が目に入った。まさか、あの爬虫(はちゅう)類の……?

 看板に引き寄せられて入った食品製造販売会社「フジタフーズ」(三次市廻神町(めぐりかみまち))の代表、藤田恒造さん(72)が仕入れたばかりの「ワニ」をさばくのを見せてくれた。厨房(ちゅうぼう)に入ると、まな板の上には4分の1にカットしたという大きな塊(約12キロ)。「では」と、藤田さんが包丁を入れると、10分足らずでさばき終わった。骨は軟骨で身もやわらかく、さばきやすいのだという。

 刺し身は、白っぽいピンク色。この地域では、ショウガじょうゆで食べるという。口に運んでみると、弾力があった。臭みはなく淡泊な味わい。箸が進んだ。

 「ワニ」は山陰地方でサメのことを言う。神話「因幡の白うさぎ」でウサギが海を渡るためにだました「ワニ」はサメを指す。

 この地域でサメを食べるのは地理的な理由があった。日本海からも瀬戸内海からも遠いこの地域では、かつて生の魚を食べることが難しく「海の魚はごちそうだった」(藤田さん)。そのため、排尿器官が未発達のため、アンモニアが体内にたまりやすく腐りにくいサメが、重宝されたのだという。藤田さんは「戦前は日本海から10日程で運んで、1カ月は刺し身で食べていたそうです」と話す。

 マグロとカツオを追っていた…

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