いつまで女子校?女子美大付属校長の思い 「ガラスの天井」壊すのは

校長から受験生へ

聞き手=編集委員・宮坂麻子
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 入試シーズンが始まります。コロナ下で頑張る受験生たちへ、校長からのメッセージをお届けします。

校長から受験生へ:女子美術大付属高校・中学校 石川康子さん

 女子校ですが、創立者の理念で、当初から「良妻賢母」ではなく「女性の自立」を掲げてきました。幅広い教養をつけるリベラルアーツを大切にする意味で、美術大学の付属校ですが、普通科にしています。

 「知性は感性を補完する」。これは以前の校長がおっしゃった言葉ですが、私は5年前に校長となり、「感性を伸ばすと知性も伸びる」を加えて教育改革に取り組んできています。感性が豊かな子はその感性を生かし、何かを創造しようとします。それを表現するには、おのずと知性が必要になります。

 AI(人工知能)に様々なことが置き換えられていく時代において、「お勉強ができて真面目な人」と「感性豊かでアイデアいっぱいの人」のどちらが求められるでしょうか。勤勉さがたたえられた時代もありましたが、これからは感性やひらめきが大切です。

 うちは美術だけを教えるわけではありません。「ICT推進チームを立ち上げるので、やりたい教職員は校長室まで」と、就任してすぐに提案しました。県立高校で長く美術教員をしてきましたが「私立ならではの教育をしたい」と思ったからです。チームはまもなくでき、翌年には教員全員にiPadを配布。研修に次ぐ研修で、職員会議も各種資料もすべてペーパーレスにしました。「(クラウドに)載せてあります。見ておいて」で終わりです。おかげでコロナ下のオンライン授業もうまく回り、生徒はタブレットを文房具として使いこなしています。

 美術を通じて英語を学ぶ「アートイングリッシュ」や、「STEAM」(科学、技術、工学、教養・アート、数学)の教育も始めました。数学も科学も感性が重要です。アートと様々なものを融合して、学んで欲しい。

 ジェンダーの観点からは「いつまで女子校?」という声も聞かれます。でも、赴任してすぐに感じました。共学の公立高校にいた女子の雰囲気と比べて、中高大学と女子だけの世界に浸った卒業生たちの方が、男女や上下関係を忖度(そんたく)しないではっきり物を言うなあ、と。「おじさまたちおかしいよ!」と躊躇(ちゅうちょ)しない。「男に負けないように」というような気持ちではなく、一人の人間として相手をみている印象です。こういう女子の方が、案外「ガラスの天井」を壊すんじゃないかと今は思っています。

 いろんなカラーの生徒がいます。読書家、おしゃれさん、アニメ好きにスポーツ好き……。ぬいぐるみをずっと抱いて授業を受けている子もいました。どんな子もみんな美術でつながっていて、日々、明るく笑って、スキップしているかのように楽しそうです。「秘密の花園」ではなく「ワンダーランド」なんです。

 女子美大では、新たな学科創設も予定し、アートシーンのみならず、構想、企画、総合職など、仲間と力を合わせて新しいことに挑戦する人材を育てようとしています。共に創造することが大切なんです。女子美付属で美術を学び、もちろん他大学の理系・文系、医学や薬学に進んでも構いません。感性を伸ばし、知性も伸ばし、どこの社会、世界へ出ても、自立できる女性になって欲しいと願っています。受験生もそんな気持ちで受けにきてください。(聞き手=編集委員・宮坂麻子

     ◇

〈いしかわ・やすこ〉1953年生まれ。女子美術大芸術学部絵画科卒業。建築デザイン事務所勤務を経て、神奈川県立高校の美術教諭、校長を務める。全国高等学校美術工芸教育研究会副会長など歴任。2014年春より同大特別招聘(しょうへい)教授、17年4月から現職。

★女子美術大付属高校・中学校

・所在地:東京都杉並区和田

・創立:1915年(私立女子美術学校付属高等女学校)

・生徒数:中学426人、高校625人

・進学実績:女子美術大149人(約7割)、女子美術大学短大部2人、東京芸術大3人、東京学芸大1人、多摩美術大8人、武蔵野美術大8人、京都芸術大3人 横浜美術大・日大芸術学部各2人、杏林大・国学院大・同志社大各1人ほか

・美術で英語を学ぶ「アートイングリシュ」など教科融合の授業多数

・高2で絵画、デザイン、工芸・立体の3コースから選択

フランスイタリアなど欧州への美術研修、オーストラリアのカレッジ、中国の中央美術学院との交流も

・内部の推薦入学で女子美術大芸術学部及び短期大学部へ進学する生徒のうち上位者は、入学金免除などの優遇あり

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