寒冷地特有の問題が東日本大震災を上回る厳しい想定に 取れる対策は

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吉沢英将、山本孝興 編集委員・佐々木英輔
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 国が日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震について検討を始めて6年。その被害想定は東日本大震災をはるかに上回った。被害のほぼすべては津波によるもので、避難時には寒冷地特有の問題も立ちはだかる。(吉沢英将、山本孝興)

 日本海溝地震が冬の深夜に発生した場合、死者が13万7千人で最も多くなるとされる北海道。想定される最大震度は6弱で、揺れによる人的被害や家屋倒壊はわずかだ。しかし、えりも町では最短わずか7分で高さ1メートルの津波が到達し、最大津波高は23・0メートルに。道南沿岸部は各地で10~20メートル超になるとされ、要救助者も5万人を超える。

 内閣府の担当者は「津波の到達時間は南海トラフ地震の方が早いが、北海道は都市間の距離が長く、救助も厳しい状況が予想される」と被害が拡大する背景を説明する。

 2018年9月の北海道地震では、道内ほぼ全域が停電する「ブラックアウト」が発生した。今回も、9道県全体の停電数の半分近い10万7千軒の停電が北海道で起きるとされる。

 寒冷地ならではの津波避難の難しさも指摘され、冬場の深夜に発生すると、夏の昼間より死者は4万人以上増えると試算された。

 揺れが5分間続き、着替えや防寒着の着用に7分かかるため、避難開始までに12分はかかると見込む。避難路も積雪や凍結といった悪条件が重なり、避難の速度は東日本大震災時の徒歩での避難と比べ、積雪時には2割低下するという。

 津波から逃れても、高台などの屋外からの救助に時間がかかれば、低体温症で命を失うリスクが高まる。有識者の作業部会は、このような「低体温症要対処者」は最大約4万2千人に上ると試算。対策として高台から避難所への避難路の事前整備や、防寒具を備えた倉庫の設置を挙げた。

 内閣府の担当者は「地域で工夫すれば、低体温症によるリスクは免れる可能性が高い」と話す。

 また、北海道の沿岸では、津波に伴って流氷が打ち上がった場合、千島海溝の地震では建物の全壊が5千棟増えると想定された。

 被害は北海道だけにとどまらない。日本海溝地震では、東日本大震災の被災地を再び巨大な津波が襲う。岩手県宮古市で最大29・7メートルなど各地で10~20メートルを超えるとされ、震災後につくられた巨大な防潮堤は壊れる想定だ。震災で津波にのまれた仙台空港宮城県名取市岩沼市)も、一部がまた浸水するという。

 想定される被害は、地震が起きる季節や時間帯で大きく変わる。今回は最悪の「冬の深夜」のほか「夏の昼間」と「冬の夕方」でも被害を検討した。

 日本海溝地震では、冬の深夜で死者が4万7千~19万9千人と見込まれるのに対し、夏の昼間だと6千~14万5千人、冬の夕方は1万6千~16万2千人とされた。同じ季節や時間帯でも、迅速な避難ができるかどうかで被害の規模が大きく変わるという。

対策により死者15万人以上減らせる、どうすれば

 今回の被害想定では、災害対策や避難意識をめぐる現状や、さらなる対策による減災効果も示された。

 たとえば、住宅の耐震化率…

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