コロナ給付金、不正受給は9億円超 返還拒めば名前や所在地の公表も
コロナ禍で影響を受けた人や企業を支援するため、国が設けた給付金には不正受給が相次いだ。経済産業省は返還を働きかけ、警察は事件化を進めている。
同省によると、売り上げが大幅に減った事業者を支援する持続化給付金は、支払った約5・5兆円(約424万件)のうち約8・6億円(855件)を不正と認定した。地代や家賃の負担軽減が目的の家賃支援給付金は、約0・9兆円(約104万件)のうち0・5億円(22件)が不正受給だった。
いずれも今年春に給付事業は終了したが、同省担当者は「簡単さと迅速さを重視しながら大金を支払う初めての取り組みで、どれぐらい不正が起きるかは開始当時わからなかった」と打ち明ける。
同省は不正対策として、疑わしい申請を警察に報告しつつ、本人に事情を聴いて不正を認定できれば返還を要求している。ペナルティーとして、20%の加算金と年利3%の延滞金も科す。不正受給者の7割以上が返還したが、返さない場合は事業者の名前や所在地をウェブサイトで公表している。
警察官、国税OB、印刷局職員も…… 摘発は2千件以上
警察による摘発も続く。警察庁によると、持続化給付金の不正受給の摘発は今年11月までに全国で計2262件(計約22億円分)、家賃支援給付金は46件(計約1億円)に上った。
21日に有罪判決を受けた経済産業省の元職員2人のほかにも、公務員やメディア関係者が詐取したケースがあった。
9月には警視庁の巡査部長が妻の職業を偽って100万円を受給したとして書類送検されたほか、大阪国税局OBや独立行政法人国立印刷局職員も詐欺容疑で逮捕された。沖縄タイムス社社員は、100万円を不正受給し執行猶予付きの有罪判決を受けた。学生や主婦が事業実態がないのに、個人事業主を装って確定申告書を偽造する例もあった。
こうした経緯を踏まえ、同省は今年3月に始めた「一時支援金」では、税理士などが申請書類を確認する仕組みを導入した。不正受給は大幅に減ったという。(新屋絵理、田内康介)
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