(評)「音楽で人を殺せるか」 その問いに答えてくれる音楽劇
今村麻子・演劇ジャーナリスト
パルコ劇場「海王星」
「音楽で人を殺せるか」とかつて問いかけていたのは寺山修司。音楽は人の心を動かせると信じていた上での問いだ。その寺山が20代後半の1963年、音楽劇として書いた戯曲の初演だ。
演出の眞鍋卓嗣は音楽の志磨遼平とともに、これまでのイメージにとらわれずに、祝祭感がありながらスタイリッシュに見せた。後年の寺山劇ではおなじみのフリークスやサーカス的な存在は薄い。父の彌平(ユースケ・サンタマリア)の再婚相手魔子(松雪泰子)を巡り、仲のいい息子の猛夫(山田裕貴)が陥る悲恋を軸に描く。3人の内面を掘り下げたことで、翻弄(ほんろう)される運命が際立ち、無神論を説く那美(伊原六花)やすべては神次第と言う老婆(中尾ミエ)の歌も効果的に響いた。
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