両崖山の山火事、鎮火まで23日間 人海戦術で立ち向かう

根岸敦生
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 栃木県足利市の両崖(りょうがい)山で2月21日に出火して燃え広がった山火事は鎮火まで23日間を要した。焼失面積は東京ドーム約35個分に相当する約167ヘクタール。消火活動のため県内外から応援が駆けつけ、人海戦術で火に立ち向かった。

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 両崖山の葉が落ち、稜線(りょうせん)の木々の間から空が透けて見える季節になった。週末になると、首都圏からのハイカーも増える。市街地に近く、東京から日帰りもできる。標高251メートルの低山だが、山々には年間約190万人が訪れる。

 山火事の第一報は2月21日午後3時36分。足利市消防本部に通報が入った。立ち木ではなく、下草や落ち葉に燃え広がった。日中は白煙が見える程度だったが、夜になると赤々とした炎が目に入ってきた。

 ふもとまで人家が建っているため、勢いが衰えない火の手が住民の不安をかき立てた。連日、乾燥注意報が続き、最大瞬間風速17~18メートルの「赤城おろし」が吹いた。火だねが飛び、燃え上がった。

 市消防団第1分団長の栗原貞明さんは21日から4日間、休みなしで消火に携わった。「『あそこまで火が迫っているので消して』と顔見知りから呼び止められた」。長さ20メートルのホースを30本常備していたが、それでは足りず、近隣の自治体から借りた。終盤は消防隊員が約20キロの水を背負い、積もった落ち葉をかき分け、掘り返し、一つひとつ残り火を消した。

 山火事の後、足利市消防本部は消火用水が確保できる場所を改めて確認した。阿部正敏消防長は「県内を始め、両毛地域の消防の協力が助かった」。日中は応援の消防隊が、夜間は地元が消火活動をした。「今回のように一自治体では対応しきれないことは起こる。消防無線の広域化が検討されているが、広域連携を検討していく重要さを感じた」と話した。

 山火事の原因は、たき火やたばこの火の不始末など人為的な理由が過半を占める。両崖山の場合もたばこの火の不始末が原因とみられている。「失敗学」を提唱した畑村洋太郎さんは個人の記憶について、「3日で飽き、3カ月で冷め、3年で忘れる」と指摘している。山火事の記憶をどう残すか、関係者も頭を悩ませている。

 山火事の現場から尾根続きにある大岩山最勝寺の沼尻了俊執事は「本堂に火事が及ぶことを覚悟した」と振り返る。焼失を防ぐため、本尊の毘沙門天像を運び出したり、仁王像の頭部を外したりして、像はあちこちが傷んだ。山火事から約9カ月。最勝寺では補修費用を募る「勧進」が年明けから本格化する。根岸敦生