第5回15年後、全人民が幸せに?経済難深まる? 視界不良の「長期政権」

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ソウル=神谷毅
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 金正恩(キムジョンウン)総書記はスイス留学の経験から「繁栄する北朝鮮」の野望を抱いていると、北朝鮮の元高官は証言する。かなえるには改革開放が必要だが、経済成長に伴う人々の意識の高まりは体制の動揺につながるため踏み出せていない。経済成長と体制維持のジレンマ――。正恩氏がこれに答えを出さないかぎり、人々は自由や成長の果実を得られない。私が実際に会った北朝鮮人との交流から、北朝鮮の今後を思い描いてみる。

「日本でぬくぬく育ったお前に分かるか?」

 その北朝鮮人の男性とは第三国で何度か会った。

 最初は私が記者ということもあってか、彼は北朝鮮メディアの主張をおうむ返しにするばかり。まともな会話にならなかったが、互いの家族に話が及ぶと、少し打ち解けた。最後には、杯を交わすようになった。

 彼が裕福でない家庭に育ったこと。それでも必死に勉強し、平壌のエリート校に入ったこと。

 1990年代の経済難「苦難の行軍」のころは兵役で軍にいた。部隊内でも餓死者が出始め、あるベテラン兵士が若い部下に、なけなしの自分の食糧を譲って、死んだという。

金正恩総書記が権力を継承してから12月で10年。相次ぐ粛清と特権層の支持で権力基盤を固めた正恩氏が、経済や人権を犠牲にしながら目指す「野望」と「限界」を描く連載の最終回です。

 「ベテラン兵士の家族に、ど…

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    箱田哲也
    (朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当)
    2022年1月1日9時45分 投稿

    【解説】 北朝鮮の金正恩総書記が最高権力者に就いて10年を迎え、専門家や記者たちの分析、報道がおおむね出そろった。新型コロナと国際制裁、災害の「三重苦」により深刻な窮状や、金正恩氏の権力が盤石となっているとの指摘が目立つ。  他方、これからの金正