第3回すべての組織が僕を追うだろう…懐に1万ドル、彼女と国境へ向かった
ソウル=神谷毅
連載「それでも、あなたを」北朝鮮・韓国編③
【北朝鮮・韓国編①】書店で声をかけてきた彼は北朝鮮外交官 南北の壁を越えた愛の実話
北朝鮮外交官のリ・サンヒョクは、偽金造りへの関与を疑われることを恐れて脱北することを決めました。恋人である韓国人通訳のユン・ミナに対して、二つの重大な決意を打ち明けます。
「話せていなかったことがあるんだ」
2人がよく通った、ミナのお気に入りのケーキ店。お茶を飲みながら向き合い、ミナはサンヒョクからこう切り出された。
そして告げられた。「北朝鮮に妻と幼い子どもがいる」
予感は、あった。職業や年齢からしても不思議ではない。
それだけではなかった。北朝鮮の外交官の家族は、人質同様に本国に残されることがある。ミナはネットの情報から、北朝鮮についていろいろ調べていた。
「そんな可能性もあるだろうと思ってた」と、ミナは答えた。
ミナが反発するのではないか。不安だったサンヒョクは、ミナの言葉に少し救われた気がした。
モスクワの書店で出会い、恋に落ちた北朝鮮外交官のサンヒョクと、韓国人のミナ。2人を隔てる国家の「壁」を乗り越えるため、大きなリスクを伴う行動を決意する。
サンヒョクは、これまでの人生を一変させる、二つの重大な決意を伝えた。
「韓国に行こうと思う。一緒…