「絶対信じられないと思っても…」 認める勇気から始まる受験と科学

校長から受験生へ

聞き手・川口敦子
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 入試シーズンが始まります。コロナ下で頑張る受験生たちへ、校長からのメッセージをお届けします。

校長から受験生へ東邦大学付属東邦中学校高校・松本琢司さん

 受験勉強には制約が伴います。コロナ禍ともなればなおさらです。

 映画「永遠のマリア・カラス」を制作したイタリア人の監督が、このように語っています。「ワインが半分のグラスを見て、日本人は半分しかないと考えるのではなく、半分は入っていると考える。そしてそれを大事に味わってくれる」。

 受験シーズンが迫ってくると、誰しも足りない部分に目が行き、不安になるものです。

 でも、目標に向けてひたむきに頑張れる今の環境は貴重です。「これしかやれていない」のではなく、「ここまでやった」と胸を張って、この緊張感を十分にかみ締めてください。

 学びの基本姿勢として一番大切なのは、謙虚さだと思っています。私たちは謙虚になれたときに初めて、素直に他人の優れている点を認め、違いを個性として受け止めることができるようになるからです。

 そして、謙虚な姿勢を保つには、時には自らをも疑うことが必要です。

 2017年は、卒業生である金井宣茂・宇宙飛行士が打ち上げに成功したことにちなんで、本校の「スペース・イヤー」としました。今はコロナ禍で中断してしまっていますが、有志の生徒が筑波宇宙センターへの見学などを行ってきました。取り組みの一環で、学校で物理学者の村山斉さんに講演していただいたことがあります。村山さんは著書の中でこのように言っています。

 「実験データが出て、そのデータがどこも間違いがないと思ったときに、たとえ絶対信じられないと思っても受け入れなきゃならない」。自分のしてきたことの限界みたいなことを認める勇気が必要だというのは、科学の歴史からすごく教えられた、とおっしゃっている。なるほどと思いました。人間はどうしても自分を正当化しがちですが、自説が否定されたとき、科学者はむしろ真実に近づいた喜ばしいこととして捉えるんです。

 このものの見方は、あらゆる場面で生かせるのではないでしょうか。受験も同じです。試験本番では思い込みは捨てて、最後まで貪欲(どんよく)に見直しをする。合否が出て、たとえ落ち込む結果になったとしても、事実を受け入れるところから世界は開けると思います。

 学校は様々な性格や個性の持ち主が集まる場所。だから面白い。今の中学2年生は、今年9月に初めて文化祭を経験しました。一緒に作り上げる上で、考え方の衝突がおきます。それを生徒自身が調整していく。オンラインでも勉強は進められましたが、本来の学びは、教員側の意図的な教育を越えて、自然とわき上がるものだと改めて痛感しました。

 AIが活躍する時代や、コロナ禍に象徴されるような先行きの不透明な社会に求められているのは、総合的な人間力です。複雑に絡み合った問題を解決しようとする際、他者と協力し合うことがまず求められますが、中高生の間にその素地を作っておくことが何より大事です。

 コロナを巡って、この2年間、色々な情報が飛び交いました。フェイクニュースに翻弄(ほんろう)されたり、偏見を抱いたりしかねなかった時期に、皆さんは科学を大切にして冷静に事態に臨むことができたでしょうか。将来的に文系理系、どの道に進むかに関わらず、エビデンスを大切にして本質を見抜く力を養ってほしいと願っています。(聞き手・川口敦子)

     ◇

〈まつもと・たくじ〉 1955年、東京生まれ。早稲田大第一文学部卒。社会科教諭、教頭を経て、2015年から校長を務める。

★東邦大学付属東邦中学校・高等学校

・所在地:千葉県習志野市泉町

・創立:1952年

・生徒数:中学923人、高校929人

・進学実績:東京大3人、東京医科歯科大4人、慶応義塾大45人、早稲田大63人、国公私立大医学部100人(東邦大医学部21人を含む)

・中3の希望者全員を対象に、2週間のオーストラリア研修を実施。医学部を志望する高校1年生には病院での外科医の模擬体験として「ブラックジャックセミナー」を行っている

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