ちょうちん自動谷折り機 ニッチな開発 中小生き残りへの道 

松田史朗
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 【広島】マツダの下請け企業の間ではこのところ、マツダのEV(電気自動車)生産への関心が高まっている。

 政府が2050年までの達成目標に掲げる温室効果ガスの排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)などを受け、低燃費のガソリン車にこだわってきたマツダも他の自動車大手同様、EVシフトへ急速にかじを切るのではとの臆測が絶えないからだ。これまでエンジン部品を納めてきた下請けに不安が広がっている。

 東京商工リサーチによると、マツダの一次下請け(仕入れ先)は全国に1567社あり、中国地方に699社(約45%)、広島県内に526社(約34%)が集中している。中国地方の二次下請けも千社近くあり、地元財界もマツダの動向から目が離せない。

 今年6月、マツダの二次下請け企業「バロ電機工業」(広島市安佐南区)を取材した。「ちょうちん自動谷折り機」を開発した制御盤メーカーだ。

 「谷折り機」とは、居酒屋の店頭やお祭りで飾られるちょうちんを機械にセットするだけで、ひだにシワをつけ、自動で折り畳んでくれる機械のことだ。

 なぜ、従業員わずか23人の会社がこんなニッチな開発に挑戦したのか。

 バロ社はマツダ車のエンジン部品を作る会社ではなく、EVシフトを心配しているわけではない。ただ、巨大な自動車産業の下請けは一定の受注はある一方で「好不調の波が激しい」という。「新車が出れば一気に仕事が増えるが、多くの企業が請け負うので分け前は少し。逆に閑散期はパタリと仕事が減る」と田中政宏社長(64)。「1社だけに頼る経営は危うい。知らない分野にあえて挑んで柱となる新事業を育てたい。だから引き受けた」

 先人が誰もいない領域への挑戦。でもバロ社は1年8カ月かけてやり遂げた。

 12月、再びバロ社に社長を訪ねた。「次は何を?」「産業ロボットを制御するシステムを開発します」

 下請けかどうかは関係がない。採算重視の大企業では着手すらできないことに果敢に挑戦する中小企業が生き残るのだろう。「自分にそんな挑戦ができるのか」。暮れも押し詰まった広島で「赤ちょうちん」を飲み歩きながら、ふと考えさせられた。(松田史朗)