「かみ」の存在、熊に感じた万葉びと 国文学者・中西進さんに聞く

有料会員記事

聞き手・上原佳久
[PR]

いまから1300年ほど前に編まれた万葉集。当時の人びとの喜怒哀楽を写し取ったことばは、いまを生きる私たちへの「贈りもの」でもあります。国文学者の中西進さん(92)に、万葉のことばを手がかりにして、広く日本文化の基層にあるものを語ってもらいました。

万葉の時代の人びとは、人間を取り巻く自然に「かみ」の存在を感じていたようです。その信仰はどこから来たのでしょうか。

 もうすぐお正月、神社へ初詣に出かける人も多いのではないでしょうか。初詣に限らず、日本人は昔から、神社を訪れては「かみ」さまに願いごとをしたり、祈りを捧げたりしてきました。私たちのはるかな祖先がこの島々に暮らすようになって以来、ずっと変わらぬ心の営みのように思われるかもしれません。

 でも、この「かみ」への信仰は、大昔の海を渡って来た人びとによってもたらされ、定着していったものだと私は考えています。具体的には、弥生時代に朝鮮半島から流入した人びとが、心のうちに携えてきたのでしょう。

 「かみ」の語源には諸説ありますが、私は朝鮮語のコム(熊)からきたとみています。もし深い森の中で熊に出会ったら、その恐ろしい姿は人間の力が及ばない超越的な存在と感じられたことでしょう。そんな熊の姿を借りて現れる(化身)、超越的な存在のことを「かみ」と呼ぶようになったのだと考えます。

 この島ぐにに生きた人びとが…

この記事は有料会員記事です。残り1439文字有料会員になると続きをお読みいただけます。