第6回幼なじみの夫は人権派弁護士 突然の拘束、崩れた私たちの幸せ
北京=高田正幸
連載「それでも、あなたを」中国編①
あきれるくらい人懐っこくて、悩みなんて何もないみたいに明るかった。陳紫娟(チェンツーチュワン)(37)は、常瑋平(チャンウェイピン)(37)のそんなところが少し苦手だった。
内陸部、陝西省の農村にある高校で2人は出会った。入学を迎えた2000年9月、校内の湖に浮かぶハスの花はほぼ散って、肌寒い風が吹き始めていた。
雲が多い日だったと思う。灰色の空に浮かび上がるような青と白の制服姿の瑋平を、紫娟はなんとなく覚えている。
ただ、その頃の瑋平の印象は「歌が上手な人」くらいのものだった。ある日の昼休み、彼は教壇に立って、たしか「愛」がタイトルにつく歌を披露した。
みんなからの喝采を受けて、なんだかうれしそう。「お調子者」。心の中でそうつぶやいた。
そんな瑋平が、高1のある頃から妙に懐いてくるようになった。教室に並ぶ2人用の長机。休み時間にふと隣を見ると、いつも彼がいた。
連載「それでも、あなたを 愛は壁を超える」
民族、国家体制、偏見…。世界には、人と人とのつながりを阻む様々な「壁」があります。それでも出会い、固い絆で結ばれた2人がいます。壁を超える愛の物語をつむぎ、背後にある国際問題のリアルを伝えます。
瑋平の好意は、すぐに学校中…