福岡市で唯一の遊園地、年末に閉園 お別れは満開のチューリップで

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高木智子
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 花のある遊園地として親しまれてきた福岡市東区の「かしいかえんシルバニアガーデン」が30日、65年の歴史に幕を下ろす。市内唯一の遊園地だが、少子化とレジャーの多様化などで来園者が減り、新型コロナウイルスの打撃も大きかった。閉園を目前にした園内は、名残を惜しむ家族連れらでにぎわっている。高木智子

 「閉園と聞いて寂しくなって、思い出づくりに来ました。ずっとあると思っていただけに、残念」

 行列ができた観覧車から笑顔で降りてきたのは、福岡市東区の森久美子さん(57)と佐賀県の田中みどりさん(56)。2人とも幼いころに遠足で、結婚してからは幼い子どもを連れてたびたび訪れた。観覧車から見た街は「マンションが建って景色が変わりましたね」と話した。

 今年3月に閉園が発表。コロナの感染が落ち着いた秋以降に入園者が増え、12月は平日でもかつての週末並みの1千~2500人になった。園内で客を案内するイベント担当マネジャーの木下千秋さん(48)は「こんなに愛着を持たれていたとはびっくりしました。最後の日までお客様に楽しんでもらうため全力を尽くしたい」。12万平方メートルの敷地にある遊具の前には、子どもからシニアまでが並んでいる。

 ルーツは、戦前に開業した「香椎(かしい)チューリップ園」。「九州初」とうたわれたが、太平洋戦争中は食料不足で農地になった。「西鉄香椎花園(かしいかえん)」としての開業は1956年4月。当時の西鉄社報で、園芸の担当者が「丸々1日楽しく遊んでいただける花園に」と抱負を語った。その名の通り、チューリップやバラなど季節の花が来園者を楽しませた。その後に遊具も整備され、子どもも大人も楽しめる憩いの場に。だが90年代後半から入園者が減った。

 「わが家のカラー写真の第1号はかしいかえん。最近はお客さんが目に見えて減ってしまった。でも、なくなるとは……」。息子や孫を連れて出かけていた、地元の吉村房子さん(93)は寂しがる。

 満開のチューリップでお別れを――。閉園に向け、1万本の「アイスチューリップ」を植えつけたのは、庭園デザイナーの石原和幸さん(63)だ。

 国内外で活躍する石原さん。17年のリニューアルから園の花をプロデュースする。

 閉園が報じられると、「初デートの場所だった」「小さい頃よく遊んだよね。懐かしい」といった声を多く耳にした。地元の人々に愛されている、思い出がつまった特別な所。こう感じた石原さんは、かしいかえんの歴史を調べ、チューリップ園にたどりついた。「チューリップで始まったならチューリップで終わる。みんなの心の中に、花の思い出を残してもらえたら」

 閉園する年末30日に咲かせるため、オランダで冷蔵処理して開花時期を調整したアイスチューリップを輸入した。ピンクや紫、白、黄のつぼみがほころぶのは、もうまもなくだ。

かしいかえんで結婚式

かしいかえんは閉園を前に、「かなえたい夢」を募集しました。その一つで、園内で結婚式を挙げた夫婦がいます。その思い出を聞きました。

 かしいかえんで結婚式をあげ…

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