脂質異常症のワクチン開発、動脈硬化や脂肪肝も改善確認 熊本大発表

大木理恵子
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 熊本大の尾池雄一教授らの研究チームは、動脈硬化症の誘因となる血液中の悪玉コレステロール値や中性脂肪値などが基準を超える「脂質異常症」について、治療に有効なワクチンを開発したと発表した。マウスによる実験で効果を確認しており、今後はヒトでの臨床試験をめざして研究を進める。

 研究チームによると、若年層の心筋梗塞や狭心症など虚血性心疾患の原因になる遺伝性の「家族性高コレステロール血症(FH)」と、その合併症である動脈硬化に効くほか、脂肪肝も改善させるという。研究成果は、医学専門誌「セルリポーツメデシン」の電子版に掲載された。

 脂質異常症は、過食などの生活習慣や遺伝が原因となる。心筋梗塞(こうそく)などの動脈硬化性疾患の主要因にもなることから、血中の悪玉コレステロールや中性脂肪値を下げることが重要となる。

 特にFHの場合、早期から動脈硬化が始まり、通常早くても50代半ばで発症する心疾患を10~30代で発症することもあり、早期治療が必要だ。FHの患者はアキレス腱(けん)や角膜の異常などの所見があるが、いずれも自覚症状のないまま、重篤になってから現れる。そのため、国内の推定患者数は25万人を超えるが、診断率は1%にも満たないとされる。

 治療にはスタチンなどの薬が広く使われるが、薬が合わない患者や複数種類を服用しても数値が正常化しない患者もいる。

 尾池教授らは、特定のたんぱく質「ANGPTL3」を持たない人が、生涯にわたりコレステロールや中性脂肪が低いことに着目した。開発したワクチンを接種すると、このたんぱく質の働きを阻害する抗体ができ、コレステロールや中性脂肪値が下がる仕組みだ。

 実験では、過食による肥満とFHのマウスにそれぞれワクチンを接種し、いずれのマウスでも脂質の値が改善。肥満マウスの脂肪肝や、FHマウスの動脈硬化の改善も認めた。抗体はワクチンの接種後30週目にも維持されていたことから、少なくとも半年は効果が保たれるという。また、目立った副反応はなかったという。(大木理恵子)