「先生の分まで強く」患者支えた院長へ、そっと花手向け 放火1週間

大阪・北新地のビル火災

古畑航希、山根久美子、藤牧幸一
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 25人が死亡した大阪・北新地の放火殺人事件から、24日で1週間になる。現場の心療内科クリニックが入る雑居ビル前の路上では連日、花を手向け、手を合わせる人の姿が絶えない。通院していた人たちは、西沢弘太郎院長(49)と向き合った日々を振り返り、感謝の思いを口にした。

 「先生がいなかったら、今の自分はない」

 大阪府高槻市の大学生の男性(25)は5年前、クリニックで1年ほど治療やカウンセリングを受けた。

 高校の頃からうつの症状に苦しんだ。浪人時代に悪化し、治療を試みたが主治医と合わず、病院を転々。だが、西沢さんだけは「真摯(しんし)に話を聴いてくれた」。通院を終えるときも、「無理だと思ったら、また来て下さいね」と優しく声をかけられた。

 「病気に負けていられない。先生の分も強く生きなきゃ」。静かに手を合わせ、前を向いた。

 大阪府茨木市の男性(63)は、30代の息子が通院している。仕事を辞め、「しんどい状態」が続いていた1年半前に西沢さんと出会った。通院を続け、「あと1、2回来たら復帰できますよ」と伝えられたのは事件の数日前。「よく頑張ったね」と親子で喜び合った矢先に悲劇は起きた。

 男性には、息子から聞いて印象に残っている西沢さんの励ましの言葉がある。「後ろを向くのは構わない。でも、前を向いたら絶対に良いことがある。少しずつでもいいから、上を向きましょう」というものだ。

 大阪市のパート従業員の女性(54)は2年前、仕事が続けられず、ホームページを見てクリニックを訪れた。西沢さんから最初にかけられた言葉は、「来てくれてありがとう。大変だったね」。いつも静かに話に耳を傾け、ときには諭し、ときには涙を流して親身に向き合ってくれた、と振り返る。仕事の面接前も、「必ず受かるから、時間に遅れないように」と緊張を和らげてもらった。

 今年9月にパートの仕事に就くことができた。「私の人生に一筋の光が差した。大変感謝しています」。そっと花を手向けた。(古畑航希、山根久美子、藤牧幸一)