第3回佐藤優がゴルゴ13をプロファイリング 日本人の「トラウマ」背負い

有料会員記事

太田啓之
[PR]

 各界の著名人やクリエーターとともに、劇画「ゴルゴ13」の背後にあるものを徹底的に読み解くこの連載。今回は、ゴルゴが暗躍する国際政治の「舞台裏の裏」まで知り尽くした、元外交官で作家の佐藤優さんが登場します。神学や哲学にも精通し、ゴルゴ全巻を読破した佐藤さんがプロファイルする「ゴルゴの過去と行く末」。「大衆向け劇画のスーパーヒーロー」という従来のゴルゴ観を覆す、濃密で過激なインタビューです。

【連載】今こそ学ぶゴルゴ13 デューク東郷の教え(全6回)

2021年9月に亡くなったさいとう・たかをさんが残した巨大な遺産にして、現代の古典である「ゴルゴ13」。ゴルゴとはいったい何者なのか。なぜ、私たちは彼に魅了されるのか。半世紀以上ぶれない彼の生き方から、今学べることは何か。プロデューサーの鈴木敏夫さん、作家の佐藤優さん、漫画家の竹宮惠子さん、「ゴルゴ13」唯一の女性脚本家・夏緑さん、最多のゴルゴ脚本を執筆してきたよこみぞ邦彦さん、「最強のゴルゴ通ライター」成田智志さんと考えます。

 ――実は今回、取材をお願いしたのは、「現代の日本人の中で、最もゴルゴに近い存在の一人が佐藤さんでは」と思ったからなんです。

 いやあ、そんなことはないですよ。似ている点を強いて挙げれば、「ワンオペ」であることでしょう。1人で情報を収集し、分析し、処理する。私はその成果を言葉でアウトプットしますが、ゴルゴは「狙撃」という暴力です。

 ――佐藤さんは学生時代、チェコの神学者について研究していましたが、外交官になって旧ソ連のモスクワ国立大に留学すると、今度は哲学科で科学的無神論を学んでいる。現在も産経新聞、朝日新聞の両方に寄稿している。「特定のイデオロギーにも組織にもくみしないが、仕事を頼まれれば請け負う」という点も、ゴルゴと重なります。

 確かに、共産主義も民主主義も信じてはいない。米国のバイデン大統領が先日、「民主主義サミット」を開催しました。朝日新聞デジタルの「コメントプラス」でも書きましたが、米国の戦略的意図は中国やイランの封じ込めにあるはずなのに、米国の味方になってもらう必要があるベトナムやタイ、トルコ、サウジアラビアを招待せず、かえって不快感を抱かせてしまった。一方で、人権抑圧が日常化しているフィリピンパキスタンウクライナ民主主義国と認定し、招いている。ちょっと考えただけでも、おかしなことがいっぱいあります。

 ――佐藤さんは、2021年秋に亡くなった作者のさいとう・たかをさんとも親交がありましたね。

私たちが生きる現実と「写像」のような関係

 ゴルゴと関わるようになったきっかけは、2008年に刊行された傑作選「各界著名人セレクションBEST13 of ゴルゴ13」で、選者の1人となったことです。その時、箱根の別宅にこもり、のべ2週間をかけてゴルゴの全エピソードを読破しました。それで気づいたのが、世界中で1カ所だけ、ゴルゴが決して足を踏み入れない地域があることです。

ゴルゴはなぜその地に足を踏み入れないのか? さいとう・たかをさんに直接聞いて帰ってきた返答や硬派な作品から時ににじみ出る世界観に、佐藤さんは「弱者に対する心遣いとさいとうさんのすごさを感じた」と言います。記事後半では、ゴルゴの内面のプロファイリングから見えてくる「ゴルゴ13」の最終回、そして佐藤さんが挙げる「ゴルゴと共通の魂を持つ3人の日本人」と、そのトラウマについて考えます。

 ――それは、どこでしょうか…

この記事は有料会員記事です。残り4602文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【7/11〆切】スタンダードコース(月額1,980円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら