秋田、鹿児島…駅前のマンション人気なぜ SUUMO編集長に聞く

聞き手・小林直子
【動画】住まいのかたち
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 コロナ禍のもとでの働き方の変化やステイホームの影響は、首都圏を中心に住まいへの価値観にも変化をもたらしました。「広い家で快適に」「もっと人と関わりたい」と住み替えを考える人もいるでしょう。リクルートが運営する不動産情報サイト「SUUMO」の池本洋一編集長に、住まいの最新トレンドについて聞きました。

 ――コロナ禍は人々の住まいの価値観にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

 まず大前提として、東京や大阪などの大都市圏と地方ではコロナ禍で受けた影響の大きさに違いがあります。

 大都市圏は在宅ワークやオンライン授業が広がり、生活の変化が大きかった。一方で、地方ではさほど広がっていない。変化量の大きい大都市圏では若干、賃貸から持ち家にシフトしたとみられます。家で過ごす時間が長くなったことで、広さに加え、遮音性、断熱性など住宅品質にこだわる人が増えたからです。また、住宅ローンの金利は10年前の約半分の1%強、変動金利なら約0.4%まで下がっています。一昔前は5千万円の予算だった人が6千万円の家を購入できる状況になったことも購入を後押ししています。

 ――一戸建てとマンションではどちらが人気ですか。

 コロナ禍で少し一戸建ての人気が上がったと思います。不動産経済研究所の調査では、東京23区の新築分譲マンションの価格はリーマン・ショック後の2009年に5200万円ほどまで下がりましたが、13年ごろから上昇し、20年は7700万円台まで上がっています。

 マンションは、鉄筋といった資材、施工依頼先、用地取得でビルやホテルの建設と競合し、高騰しています。一方で一戸建ては木造が中心。土地の競合も少ない。工期を短くしたり、資材を共同購入したりして企業努力も進んだ。価格はコロナ禍の需要増とウッドショックなどでこの1年は上昇しましたが13~20年まではずっと横ばい。「物価の優等生」なんです。一戸建ての人気は続きますが、コロナ禍で本来は「子どもが大きくなったら買おう」と思っていた人の前倒し購入が発生したこともあり、今後は少し落ち着く方向かと思います。

 新築マンションでは、東京都心や湾岸エリアのタワーマンションが共働きで世帯年収が高い夫婦に人気があります。これらのマンションは、単身やシニアなど幅広い層からの需要があり、今後も価格は上がり続けるでしょう。

 ――賃貸のマーケットはどうでしょうか。

 賃貸は新築の供給が少なく、持ち家購入に踏み切った人がいる一方で、コロナ禍で不要不急の引っ越しをしなかった人もいます。そのため、高い入居率になっています。中でも人気なのがUR都市機構の団地です。首都圏の物件は昨年、ここ10年で最高の入居率でした。URの団地は1棟1棟、ゆとりを持って建てられており、高台や地盤の強い土地にあることが多く、水害や地震などの災害に強い。ほどよく緑もあり、都心へのアクセスも悪くない……。そういった点で価値が見直されています。

 ――シェアハウスやコレクティブハウスなど「集まって住む」ということを選ぶ人もいます。

 シェアハウスは家賃が安いことに加え、家具や家電を買うことなく住める手軽さが人気でした。ただ、スペースを共有するため、コロナ禍では感染リスクがあり、私は需要が落ち込むと思っていたんですよ。ところが、逆に人気になりました。これはどういうことか。

 人との接触が減り、「寂しい」ということではないでしょうか。オンラインが主流になり、学校にも会社にも行かなくなった。ずっと一人でいて、気持ちが落ち込む人は少なくなかった。集まって暮らすことで「家族的なもの」を求める人が増えたのだと思います。

 ――住居を転々とする「アドレスホッパー」など決まった住まいを持たない暮らしを実践する人もいます。

 コロナ禍前からホステルやサービスアパートメント、コリビングなど、暮らしながら仕事ができる施設が整備されてきました。そこへコロナ禍で働き方が変化し、ノートパソコンやタブレット端末を1台持っていれば仕事ができる人が増えた。そうなってくると「家賃がもったいない」「ならば一度試してみよう」と挑戦する人が現れました。

 ただ、移動し続けるのは疲れますよ。実家やどこかの拠点に荷物を置いて、可能な範囲でホッピングしながら生活する持続可能な方法に落ち着く人が多い。完全な根無し草で移動を続ける人は少数派です。

 ――コロナ禍で変化量が少なかった地方でのここ数年のトレンドは。

 北海道の旭川駅や秋田駅、鹿児島中央駅など地方の中核駅の駅前のマンションが人気です。購入するのはシニア層。彼らは郊外に庭付き一戸建てを持っていますが、子どもが巣立って部屋は余り、庭の手入れや雪下ろしなどの手間もあり、住み替え需要が高まっていました。そこへ鉄道会社や自治体による駅前再開発が行われ、商業施設、図書館やイベントホールなどの公共施設が併設・隣接する魅力的なマンションが登場した。

 地方の中核駅でのSUUMOの物件ごとの閲覧数は、一戸建てよりマンションの方が多くなっています。「アクティブシニア向け」と銘打ったマンションも続々と販売されています。

 ――シニアが住み替えることでどんな効果があるのでしょうか。

 「空き家予防」です。シニアが引っ越して空いた家を買い取り、リノベーションして子どもがいる若いファミリーに中古住宅として再販売するという仕組みをつくっている地域があります。生前に次の世代に渡すことで空き家にはならない。残される家族にとっても合理的な選択肢です。いま、「世代人口循環の仕組み」として注目しています。(聞き手・小林直子

池本洋一さんのプロフィル

 いけもと・よういち 1995年、リクルート入社。編集、広告営業などを経て2011年からSUUMO編集長。SUUMOリサーチセンター長も兼任し、住まい領域の調査・研究やメディアでのトレンド発信をする。

連載「住まいのかたち」

2021年もステイホームの暮らしが続きました。多くの時間を過ごす「住まい」とは、私たちにとってどういう存在なのか。様々な「家」を舞台に、そこに住む人たちの姿を通して豊かな暮らしのヒントを探ります。