トキ色の千両役者が引退 E4系新幹線は「鉄道史的に保存しないと」

高橋俊成
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新潟の2021年を振り返る

 「千両役者」の勇退――。10月1日、新潟駅の11番線ホームはそんな表現が似合う「舞台」だった。国内最後の2階建て新幹線「E4系Max」の定期運行最終日。午後8時21分。ホームを埋めた多くの人が、暗闇に消えていく最終列車の赤いテールライトに向かって大きな拍手を送った。

 鉄道好きの記者(27)にとってもMaxは思い出深い車両だ。小学2年の時、人生で初めて乗った新幹線が初代Maxの「E1系」。2階席の車窓から見た高速で過ぎゆく風景を、今も鮮明に覚えている。新潟赴任後も、取材や出張で何度も乗った。

 乗客からは、実に様々なエピソードを聞くことができた。「大学の合格発表を見に行く時にドキドキしながら乗った」「娘と一緒に2階から見た田園風景が思い出深い」「ホームと同じ目線から見上げる1階の席も実は魅力的」……。16両編成での定員1634人は、高速鉄道では世界最大。一緒に運んだ思い出も、それだけ多かったのだろう。車体の帯はトキをイメージしたピンク。越後路の主役を張り続けた。

 だが、老朽化と、ダイヤの高速化の時流にはかなわなかった。E4系の後任には最新のE7系が就いた。11月、営業用の新幹線としては初の自動運転試験が新潟市内であり、E7系が使われた。将来的な無人運転も見込んだ設計と聞き、E4系にない技術発展の大きな可能性も感じられた。

 それでも、E4系の人気は引退後も根強い。11月に新潟市内であったE4系の見学ができる親子向けイベントは、予約が1日でいっぱいになった。貸し切りの臨時列車として東北新幹線の盛岡駅(岩手県)などにも足を伸ばすなど、最後の「巡業」でファンの注目を集め続けた。

 定期運行終了から約3カ月。残念ながらE4系は解体が進められているが、新津鉄道資料館(新潟市秋葉区)に行けば、2017年から静態保存されている先頭車両を見られる。

 「鉄道史的にも保存しないといけない車両。愛着を持って、車窓を思い出してもらえるように残していきたい」と学芸員の岩野邦康さん。車両横の説明板は「世界に誇る2階建て新幹線」と紹介している。大量輸送時代を支え、多くの思い出を運んだ名役者の活躍は、これからも記録と記憶に刻まれ続ける。(高橋俊成)

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 E4系新幹線 「Max」の愛称を持つ2階建て新幹線の2代目として1997年にデビュー。最高時速240キロ。4・5メートルの車体高が特徴。当初は2020年度に引退し、E7系に替わる予定だったが、19年の台風19号でE7系の一部車両が水没。E4系の引退は21年秋まで延期になっていた。