成長期アスリートに勧める「お米」の力 シンポジウム開催

【動画】シンポジウム「成長期アスリートの食と栄養を考える」が開催された
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 シンポジウム「成長期アスリートの食と栄養を考える~世界が認める米の可能性~」(朝日新聞社、NHKエデュケーショナル主催、全国農業協同組合中央会協力)が11月10日、東京都千代田区の千代田放送会館で開かれた。最新のスポーツ栄養学を元に、何を、いつ、どのように食べたら、スポーツに励む若者の体作りに効果的なのか。元アスリートや成長期の子どもを育てるタレントらが意見交換した。

基調講演 管理栄養士・公認スポーツ栄養士の橋本玲子さん

 スポーツの現場で食のサポートをしている。多くの選手に接していると、いかにお米が大事かということを常日頃感じる。残念ながらなかなかお米を食べないトップ選手、子どもたちが多い。

 プロサッカークラブでは約20年弱、トップのプロの選手の食事サポートをした。私の場合、海外遠征があるときには必ずチームに同行させてもらった。実際にホテルに入って、厨房(ちゅうぼう)のシェフと日本のお米の炊き方や、こういうふうにみそ汁をつくってほしいとメニューのやりとりをした。現地のおいしいものを食べたとしても、「日頃食べ慣れているものが食べられる」ことがパフォーマンスを上げるために大事になる。

お米中心の食事で理想的な体に

 2003年のラグビーワールドカップでは、日本代表チームの栄養士として合宿や海外遠征に同行した。サッカー選手に比べるとラグビー選手のほうが、1日に必要なエネルギー量が1500とか2千キロカロリーぐらい多くなる。お肉をたくさん食べる選手が多いという印象だった。02年のニュージーランドの遠征先の食事では、日本のお米が手に入らないと痩せてしまう選手もいて、必ず和食と洋食を出していた。

 全寮制の高校相撲部の手伝いをする機会もあった。毎日お米中心の食事を出すことで、体脂肪率が下がり、筋肉量も増えて、理想的な体になる。さらに、選手は、「ちゃんこ当番」で食事の手伝いをすることで、何を食べて筋肉がつくのか、トレーニングと食が結びつくようになる。日本のアスリートは、お米を中心とした食事を取っていれば絶対いい、と思った。

パネルディスカッション

パネルディスカッション 参加者(敬称略)

橋本玲子 管理栄養士・公認スポーツ栄養士

浅尾美和 タレント・元ビーチバレーボール選手

はなわ  タレント

野崎洋光 東京2020オリンピック・パラリンピック     メニューアドバイザリー委員会メンバー

三宅民夫 元NHKアナウンサー(コーディネーター)

3人息子は成長期アスリート はなわさん

 ――生活リズムの乱れ、とりわけ食生活の乱れが成長期のアスリートの体に不調を招くことが指摘されている。

 橋本 本当に食は大事だ。「何をどのように食べる」ということを理解すると、自分に合った食べ方を身につけられ、パフォーマンスにも良い影響が出る。

 はなわ うちは3人の息子がいて、柔道をしている。3人ともまさに成長期アスリート。食が大事だというのはずっとはなわ家のテーマでもある。

 浅尾 ビーチバレーは本当に運動量が多くて、筋肉量が減らないようにこまめにたんぱく質を取ることを意識していた。今は家族ができて、子どもの口に入れるものが「この子たちの体を作っていくんだ」というちょっとした緊張感を持っている。「食事って楽しいな」というイメージが崩れないように、現役時代より努力している。

 ――成長期のアスリートたちの食事の状況は?

 橋本 スポーツをしている成長期の子どもたちは食が細い。1日に必要なエネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルが取りにくいというのが現状だ。もう一つは「孤食」。子どもが一人で食事をしたり、あるいは偏食で好き嫌いがあったりすると、どうしても自分の好きなものしか食べなくなる。

 はなわ 長男は小学生のときにちょっと太っていた。柔道もばりばりやっていて、めちゃくちゃ食べる。結構太ってきたので、ダイエットさせたが、体は絞れても、練習に行くと疲れが出て、すぐにばててしまって。あのとき、親が勝手に制限させてしまったのは良くなかったと反省している。

 浅尾 5歳と7歳の男の子がいる。子育てをしているお母さんたちからは、「『ちょっとご飯を少なくして』って言われる」という悩みを聞くこともある。そういう時は、同じトレーニングをしていても食べる物、栄養の違いで結果は変わってくるので、周りの大人が子どもに教えてあげることが大事だと思う。

 ――成長期のアスリートはどのくらいの量を食べたらいいか。

 橋本 中学生の男子で1日に必要な食事の量は約3200キロカロリー。献立にしないとイメージがわかないかもしれないが、例えばご飯では約700グラム必要だ。200グラムのお茶わんで3杯半くらい。この主食が足りていない子どもが非常に多い。

 はなわ うちはちょっと足りすぎているかもしれないが、周りの子を見ていても、そんなに食べていない。

小さめのおにぎり、みそ汁に野菜を 浅尾さん

 ――なぜ、子どもたちは必要なエネルギーを取れないのか。どんな気がかりな状況があるのか。

 橋本 朝食を抜いてしまう子どもの割合が増えてきている。必要なエネルギーを取るためには、朝食や睡眠を見直す必要がある。寝ている時間は食べ物がエネルギーとして使われているので、朝起きたとき、たんぱく質、筋肉が分解されてしまっている。朝食を取って筋肉の材料を入れなければ、成長できない。ご飯とおかず、野菜を取ることがとても大事になる。

 はなわ うちも一時期は朝、食べないことがあって。色々勉強し、今は食べるようにしている。やっぱり全然違う。

 浅尾 子どもが幼稚園のときはしっかり食べる時間があったが、小学校に入ったら午前7時過ぎには出ていってしまう。睡眠というよりも食べる時間が短くなってしまったので、小さめのおにぎりと、みそ汁に野菜も入れるようにした。

補食はタイミングと何を選ぶかが大事 橋本さん

 ――例えば、15~17歳の運動する男性は、1日3食で計3150キロカロリー取る必要がある。これだけのエネルギーを取れるのだろうか。

 橋本 まず難しい。そこで、三度の食事で足りない物を補うという意味で、「補食」という考え方を紹介する。できれば昼と夕食の間に一度何かを食べる。食べられなければ、夜にバナナとか、おにぎり1個とか胃に負担がかからないような補食を取り入れるのも一案だ。

 はなわ うちはめちゃくちゃ補食している。たぶん、給食が足りない。お菓子はあげないようにしている。だから4食食べているような感じ。

 橋本 どのタイミングに、何をどれだけ選ぶかが大事なポイントになる。運動の1~2時間前に食べれば気持ち悪くならない。おにぎりとかうどん、あるいはあんパンといった物は、砂糖とかチョコレートのようなものよりもゆっくりエネルギーに変わるという特徴がある。逆に運動するまでにあまり時間が無くておなかがすいていれば、固形物ではなく、ゼリー飲料やスポーツ飲料、グミなどを補給する。運動後もすごく大事で、おにぎりや、卵のようなたんぱく質が入ったものを取ると良い。例えば、選手たちは試合が終わった後のロッカールームで、よくおにぎりを食べる。

 浅尾 すごくわかる。アスリートの時、トレーナーさんから「今食べて。これが筋肉になるから」と言われて食べていた。

 ――近頃は糖質ダイエットも話題で、炭水化物をたくさん含む米を食べると太るというイメージは消えていない。米食のメリットは何か。

 橋本 お米がすごくいいのは脂質が少ないこと。胃にもたれず、エネルギーを十分に取れる。また、お米に含まれる「難消化性でんぷん」は、砂糖やジュースなどに使うブドウ糖と比べてゆっくりエネルギーに変わり、腹持ちがいい。

 ――理想のアスリート食を考える上で、サプリメントをどう位置づければいいか。

 橋本 トップアスリートは、基本は食事を大事にしている。ただ、運動量が多かった時などは1日に必要な栄養素を食事で補いきれない。そういうときに食事に加えて、サプリメントをきちんと量を守って取る。ただ、成長期の場合は、サプリメントを取るより、おにぎりや牛乳など手をかけなくていい物で、「食事で何を取れるか」と考えることがすごく大事だ。

 ――理想の栄養と食を理解し、実践するために何が必要か。

 橋本 朝食をしっかり取る。おかずを1日3回食べる。野菜を残さず食べる。牛乳を毎日飲む。果物を毎日食べる。水分を積極的に取る。三度の食事以外に補食を取る。

 ――今回の話し合いで、大事に思ったことは?

 はなわ お米と和食のパワーがすごいことが改めてわかった。

 浅尾 子どもを育てているので、食育に力を入れていきたい。

 橋本 成長期の場合はまずは食べることが大事。体重が増えていないとか、身長が伸びないということが気になるのであれば、たくさん食べるということもすごく大事かなと思う。

食は練習同様に重要 サッカー選手・中村俊輔さん

 長年サッカー界で活躍するプロ選手、横浜FCの中村俊輔さん(43)は、食生活の失敗談をビデオを通じて語った。

 中村さんは、中学生の頃、練習前に菓子パンや甘い炭酸水などを口にすると、帰宅後、夕食が入らないことがあった。1~2年ほど、そんな食生活を続けたら、体力が落ち、上のクラスのチームに上がれなかった。食事と栄養のバランスの大切さに気がついたのは高校に入ってからだったという。

 日々、食の内容と量、食べる時間を自覚するようになったが、初めての海外移籍先のイタリアで、食習慣の違いから栄養のバランスを乱した。

 イタリアの食習慣に沿った方がいいと考え、3カ月ほどパスタなどを食べ続けたら、体重が2~3キロ増えた。欧州や南米出身者と「同じ物を食べてはいけない」と考え、日本食に。次の移籍先のスコットランドでも、スーパーで納豆を見つけたら購入するなど、ほぼ日本食の生活だったという。

 今は、プロのサッカー選手を目指すアスリート向けの栄養セミナーなどで、自らの食生活の失敗談を披露することもある。食の大切さを説き、「練習と同じ。もしくはそれ以上に大事」と伝えている。

おすすめの成長期向け献立 野崎さん

 日本食店の総料理長を務める野崎洋光さんは、成長期のアスリートのために家庭で簡単に作れる朝・昼・夕の献立を考案した。

 朝食のみそ汁には、豆腐や油揚げなどが入っていて、サプリメントに近い上質なたんぱく質が取れる。昼食のイカとナスのみそあえは、みそが使われるところが良い点。少しのみその油で、脂肪過多にならない。夕食は、お肉を強調しない献立になった。鶏肉はゴボウとセロリと一緒に煮ることでバランスを取った。補食には「おはぎ」を選んだ。

 すべての献立の主食は、お米だ。ご飯1膳300グラム、500キロカロリー。野崎さんは「ご飯という消化がしやすいものを食べて、バランスが取れる」と語った。