第13回苦しい生活、それでも底抜けに明るい2人 そっと背中を押したい
イスタンブール=高野裕介
連載「それでも、あなたを」トルコ編 取材を終えて
「仕事は紹介してくれますか?」
ワリードさんに取材依頼の電話を入れたとき、開口一番そう言われました。なかなか職が見つからないのだと。彼にとっては、取材を受けることなんかよりも、収入を得て家族を支えることの方が断然大切なことでした。
私はこれまでイラクやシリア、ジブチやパキスタンなどで、戦争や迫害を逃れてインフラも整わない場所や、難民キャンプで暮らす人たちに接してきました。
温かく迎えられましたが、援助関係者ではなく記者だと知ると、がっかりした表情を浮かべる人も多かったです。「外国に行く手助けをしてくれますか」「日本政府の人に引き合わせてくれませんか」。そのたびに、何もできない自分が情けなくなります。
だから、ワリードさんの家を訪ねるときも、正直、気が重かったのです。
でも、ワリードさんは、慣れ…