第2回「よそはよそ」はびこる日本 池澤夏樹さんが語る境界と差別の今

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聞き手・平岡春人
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 私たちの社会にはさまざまな「境界」が存在しています。問題解決には何が必要か、望ましい境界の未来を模索する連載企画「ボーダー2.0」を年末年始に掲載します。プロローグとして作家の池澤夏樹さん(76)に、日本の社会的課題を境界の側面から語ってもらいました。

 境界と聞くと、まず「国境」を思い浮かべます。

 これまで海外に計8年間住み、数十カ国を旅した経験からだと思います。

 たとえば、トルコのアナトリア地方はシリアイラクなどと国境を接している。延々と緩い丘がどこまでも続いて、そのどこかに国境線がある。この地形を見て、大陸で戦車がいかに脅威であるかを実感しました。

 島国の日本にも、かつては樺太がありました。戦前、俳優の岡田嘉子が杉本良吉と樺太から旧ソ連へ渡り、亡命した。日本人はあれで初めて国境を意識したのではないでしょうか。

 現在は陸地の国境線がないので、日本に暮らす市民の国境への意識は低いと思われます。

池澤夏樹(いけざわ・なつき)

 1945年、北海道帯広市生まれ。小学校から東京育ち。作家、詩人。ギリシャや沖縄、フランスに住み、2009年から札幌市在住。エッセーも手がけ、時事問題をめぐる著作も多い。芥川賞を受賞した「スティル・ライフ」、明治初期に北海道に入植した和人の兄弟とアイヌの人々との繁栄と没落を描く「静かな大地」、本土復帰前の沖縄が舞台の「カデナ」など作品多数。朝日新聞朝刊で小説「また会う日まで」を連載中。

 日本が難民に冷たい国なのは、そのせいかもしれません。欧米諸国が何万人と難民を受け入れる事態があっても日本は数人しか受け入れない、ということもあります。国や民族、宗教が違う人も、いざとなれば助けあうべき親戚です。その感覚が醸成されないまま、日本は近代国家になりました。

 この国で最も問題のあるボーダーは「文化的な国境」、つまり「よそはよそ、うちはうち」という態度で差別を放置し、国際社会の中で遅れている現状です。

 顕著なのがジェンダーです。世界経済フォーラムが今年まとめたランキングで、日本は156カ国中120位。先進国でこれほど後れをとっている国は他にありません。男性が女性の地位を抑え込み、国の力をそいでいます。9年前、あるコラムで日本を「今もって男性の、男性による、男性のための国」と書きましたが、今も状況は変わりません。

 「うちは昔からこうでした…

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