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第7回料理で認知症を予防? 医師が説く「クッキングリハビリ」の可能性

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井上充昌
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 人の生活に直結する料理は、体の「記憶」となって、老いゆく人を助けるのではないか。料理のそんな可能性に着目し、ユニークなリハビリを始めた病院がある。

 大きな窓からは市街地を一望でき、キッチンのそばにテーブルとイスが並ぶ。冷蔵庫に電子レンジもある。マンションのショールームのような明るい33平方メートルの部屋は、実は病院の「機能訓練室」。福岡市のリハビリを重視する牟田病院の中にある。

 昨年12月上旬。入院中の80代の女性が機能訓練室にやってきた。手洗いを済ませ、ジャガイモの皮むき作業にピーラーを手渡された女性は顔をしかめた。「これは使い切らんよ。包丁でないと。私たちの頃はなかったもん」。そう言って手際よく包丁を使い、皮をむき始めた女性に、病院の作業療法士小原由紀さん(36)と管理栄養士の萱嶋裕美さん(46)は、「私たちより上手」とうなった。

 ここでは、入院患者が料理をすることで知らず知らずに心身を訓練する、名付けて「クッキングリハビリ」が行われている。

 この日作ったメニューの一つはいももち。口に入れると、あめ色の甘辛いたれの香りが広がり、かむほどに焼いたジャガイモの香ばしさと素朴な甘みと合わさっていく。

 試食した女性は「うん、うん」と2回うなずき、「ごちそうさま」と笑った。

 女性はけがからの回復期にある。ジャガイモを器具を使って押しつぶす作業は握力強化になる。退院後の日常生活に握力は不可欠だ。

 福岡大医学部の合馬(おうま)慎二医師(脳神経内科学)は、こうした作業が筋力のリハビリになるだけではなく、脳を活性化させ、認知症予防にもつながっていると説明する。

牟田病院の「いももち」のレシピ

 【主な材料】 ジャガイモ4個、片栗粉大さじ4、バター10g、たれ(しょうゆ・砂糖各大さじ2、みりん大さじ1)

 【作り方】 ジャガイモの皮をむき、厚さ1㎝のいちょう切りにする。鍋に水を沸かし、ジャガイモに竹串がすっと通るまでゆでる。ジャガイモをざるに上げ、ボウルで滑らかになるまでつぶす。片栗粉を入れ、手でこねる。ピンポン球の大きさに分け、両手で丸め、直径5㎝の円形に平たく伸ばす。フライパンに弱火でバターを溶かし、いももちを並べて両面を焼き、取り出す。ボウルにたれの材料を混ぜ合わせ、同じフライパンで中火にかけ、砂糖が溶けるまで温める。いももちを皿に盛りつけ、たれをかける。

成功体験の積み重ねが変える

 カギは脳の「手続き記憶」にある。

 人の記憶には、具体的に説明…

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