「いい家族」と「悪い家族」分断のコロナ禍で柚木麻子さんが見た希望
うちで家族と過ごす時間が増えたコロナ禍。家事や子どもの相手、感染対策……。暮らしを維持するためにやることは格段に多くなりました。家族と家に閉じこもりきりの日々に息が詰まる気持ちになることも。一方で、家族がいてくれること、その大切さを改めて実感した人も多いでしょう。「大事だけど、つらい」。家族や暮らしの営みに、この矛盾したような思いを抱えるのはなぜなのか。小説家の柚木麻子さんに聞きました。
柚木麻子
1981年生まれ。「ランチのアッコちゃん」「ナイルパーチの女子会」「BUTTER」など著書多数。近著「らんたん」でシスターフッドを描く。
――コロナ禍に入り、なるべく外出せずに過ごしていたと聞きました。
「家族との時間は増えました。最初のうちは仕事が全く進まないことに悩み、『ケア』は労働だ、と改めて感じました。『絆』どころではなかった。一方で、子どもの成長をじっくり見られたことは、とても貴重な時間でもありました。『大変だけれど、いい面もある』のだと思っていました」
「ところがつい最近、知らないうちに失っていたものに気付きました。『家族といられるだけで十分』と思うほどになっていたのですが、感染状況が落ち着いた昨年秋、コロナ禍でほぼ初めて人に会うようになりました。その時、『ああ、生きてる』、と感じたんです。『私はこういう人間だったんだ』、と。それまでの私は、本当の私ではなかった」
――「家族だけで十分」ではなかった、ということですか。
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【視点】これまで「ケアとは心や絆でやるものだ」と、その家族の善意を人質に取り、自助でどうにかするものという圧が社会からかけ続けられていたように思います。「辛い」「逃げたい」と一度言えば人でなしの偏見を向けられる気がして、本音も言いにくい。 ヤ
【視点】年末のこの時期は、家で片付けにご飯づくりにバタバタしていると、一番もやもやが募る時期かもしれません。休みに入ってゆったりした空気が世間や家族の間に流れる中で、自分はなぜこんなに余裕がなく、苛ついているのだろう、と。ママ友や同僚たちからも、苦