第14回国中が停電した夜、別れを決意した私 憧れだった彼は弾圧で墜ちた
マイアミ=岡田玄
連載「それでも、あなたを」ベネズエラ編①
もう限界だった。
2019年、南米ベネズエラの首都カラカスは物不足にあえいでいた。庶民にろくな食料や医薬品が行き渡らず、人道危機に直面していた。
30歳の建築デザイナーのアンドレリス・ラミレスも、1歳半になる娘アリシアと米国に渡る決心をした。
物不足もある。でも一番の理由は、パートナーにあった。
メラニオ・エスコバル。ベネズエラで人気を博した元パンクロッカー。その後、記者となり、表現の自由や人権を守る活動もしていた。パンクファンのアンドレリスにとって、15歳の時からあこがれの存在だった。
2014年にツイッターで交流したことをきっかけに、仕事の合間に会いに来るメラニオを愛するようになった。17年に娘が生まれ、一緒に暮らし始めた。
だが、弾圧の対象だったメラニオとの日々は、危険と隣り合わせだった。
メラニオは反政府デモの取材に行けば、至近距離から催涙弾を撃たれた。誘拐されて、財布から車のキーまで所持品のすべてを盗まれ、殴られて帰ってきたこともあった。そんなことが幾度となくあった。
ビルの6階にある自宅に2発…