「複素解析を習いたい」算数塾に現れた小4 世紀の超難問に挑む

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石倉徹也
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<前編> 13歳の数学者、素数の定理を次々に発見

 神奈川県に住む13歳の梶田光君は、その若さで数学の定理を次々に発見している異能の持ち主だ。数学は勉強というより、遊びに近く、パズルを解くようなものらしい。研究が楽しくて、今は「数学のスイッチがずっとオン」の状態という。「相棒」である79歳の数学者は「志が高く、発想力も抜群」と太鼓判を押す。いったい、どんな世界が見えているのだろうか。

前編では、小学4年生の梶田光君が、「相棒」となる数学者と出会うきっかけ、そして、証明に挑戦した超難問について聞きました。

「複素解析を習いたい」 笑顔で現れた小学生

 2018年。東京都内に住む数学研究者、宮本憲一さん(53)の元に電話がかかってきた。「うちの子に数学を教えてほしいんです」。神奈川県内の小学校に通う息子を持つ母親からだった。

 宮本さんは自宅で子どもたちに算数を教える塾を開いていた。「いいですよ」と二つ返事した宮本さんは、母親の次の言葉に驚いた。「複素解析を習いたいというのです」。大学で学ぶレベルだった。

 翌日、笑顔で現れたのが、当時小学4年生の光君。ライプニッツの公式など高度な数式をすらすらと書く姿を見て、宮本さんは「これはかなわない」と思って、すぐ師匠に助けを求めた。

 その師匠が、代数幾何の権威で、日本数学会理事長も務めた学習院大名誉教授の飯高茂さん(79)。約8年前に大学退官後、カルチャースクールなどで、宮本さんら教え子とゼミ形式で数学する日々を送っていた。

 飯高さんもすぐ、光君の才能に気づいた。

 「一人の数学者として対等に議論することにしよう」

 質問には答えるが、テーマを与えたり指導したりはしない。本も薦めないし、褒めない。そう決めた。

「彼の才能をリスペクトしているからです」

 光君は2週間に1回、東京都多摩市へ通った。そこに借りている6畳ほどの小さな教室で、飯高さんや宮本さんと数学を議論する日々が始まった。

 飯高さんが注目したのは、本質をつかむ力だ。大学レベルの「環論(かんろん)」などの書物を渡すと、ぱっと見ただけでのみこみ、説明できた。

 どこから発想を得たのか、不思議に思うこともあった。

 ある問題を解いている時だった。「飯高先生、こんな式を考えてきました」と式を見せられた。それは、飯高さんが以前つくった方程式の改良版だった。「私の方が理にかなった自然な式だったから、本当ならちょっと失礼な話ですよ」

 でも、その式を使って計算すると解の形がシャープになり、応用もきいた。「有力な式とわかり、納得しました」

超難問「双子素数予想」への挑戦

 そんな光君が最初に興味を持ったのは、超難問として知られる「双子素数予想」だった。

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