再びの半導体支援「うまくいかない」 元エルピーダ社長坂本さん

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福田直之
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 「日の丸半導体」の再興をめざしたエルピーダメモリの倒産から、もうすぐ10年。国の支援を受けたこの会社で社長を務めた坂本幸雄さんは、半導体の新たな振興策に何を思うのか。(福田直之)

 日本政府は、世界的な半導体メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)の工場を熊本県菊陽町に誘致する。建設費用8千億円のうち、半分の4千億円を補助する。だが、「あれはうまくいかない」と坂本さんは言い切る。その理由は「補助金が少なすぎること」だ。

 「単にサプライチェーンをちゃんと整備するだけのことであって、それ以外の何ものでもない」

 坂本さんは、米中対立のさらなる深まりなどの有事に備えて供給を確保する意義は認める。ただ、半導体産業は装置産業であり、資金繰りが鍵を握る。工場の建設や生産ラインの増設には巨額の投資がかさむ。

 「米国は6兆円近く、欧州だって17兆円くらいのお金を出してゆく。そういうことを日本はやれないのだろうか」

 坂本さんがかつて率いたエルピーダは、韓国勢との安値競争に敗れたNECと日立製作所のDRAM事業を統合し、1999年に発足した。その後、三菱電機の事業も合流し「日の丸半導体」復活の担い手と期待された。

 しかし、安値競争に加えて急速な円高も響いた。「1ドル=90円が損益分岐点だったが、1ドル=75円まで進んだ。お金を集めるのが大変だった」。待っていたのは資金繰り倒産。2012年2月のことだ。

 政府が今回、半導体支援に用意できた基金は総額で6千億円だ。永田町霞が関の一部には「兆円単位の支援が必要」との声もあったが、コロナ対応の予算も膨らむなか、そこまでは届かなかった。

 坂本さんは半導体産業へのさ…

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