相米慎二と森田芳光。日本映画の過渡期だった1980年代を先導し、惜しくも早世した監督が今年、それぞれ没後20年と10年を迎えた。2人に脚光を当てる数々の企画を見ると、彼らが今の日本映画に与えた大きな影響がうかがえる。
相米慎二の先見「能動的なヒロイン」
相米慎二は80年、薬師丸ひろ子の「翔んだカップル」でデビュー。81年、同じく薬師丸の「セーラー服と機関銃」をヒットさせた。2001年、53歳で死去。
アイドル的な人気の若いヒロインを輝かせる演出に定評があり、極端な長回しなど強烈な映画話法は後進にも影響を与えた。
濱口竜介ら現代の監督もその影響を公言する。90年生まれの韓国のユン・ダンビ監督は「少年少女のささやかな日常を簡潔かつドラマチックに描く。相米は、世界でも卓抜したアーティストです」と語る。
今年は特集上映が各地で開かれ、劇場支配人らによると、特に20~30代の観客が目立ったという。関係者の証言を集めた『相米慎二という未来』と、彼自身のエッセーを中心に編んだ『相米慎二 最低な日々』の二つの書籍も出た。
いずれも編者として関わった映画ジャーナリストの金原由佳さんは「若いヒロインを、能動的に行動しメタモルフォーゼ(変身)する存在として物語の中に据えた」と相米を語る。「男にただ見られる受け身の存在ではなく、自発的に前へ前へと進んでいく女性として描いている。女性の表現に先見性があり、そこが死後も評価を高めている理由ではないか」(小峰健二)
「天才」森田芳光に時代が追いついた
森田芳光は自主映画出身。81年に「の・ようなもの」で商業監督デビューし、83年の「家族ゲーム」で映画賞を総なめにした。薬師丸の「メイン・テーマ」など、コンスタントに作品を発表し、11年に61歳で亡くなった。
今年、特集上映など様々な企画があった。20日には「そろばんずく」を除く26作を収録したブルーレイボックス「森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)」が発売された。
森田の特徴は笑いのセンスに…
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