第5回顔見ぬ人から届いた1万1千円 孤独な父親、つながり求めたSNS

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牛尾梓高久潤 真野啓太、竹野内崇宏、興野優平
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 宮城県の沿岸部に住む男性(48)は昨夏、いつもは一つしか買わないアイスクリームを三つ買った。小学生になる2人の子どもは、うれしそうに食べた。

 ツイッターで知り合った「普通の会社員」を名乗る見知らぬ人から3回に分けて届けられた計1万1千円のおかげでできた「ぜいたく」だった。

 「滞っている支払いができない」「寝ている間は嫌な夢ばかり」。ツイッターで、ひとり親であると明かし、ほかのひとり親のアカウントを参考にして、決済アプリ「PayPay(ペイペイ)」のIDも載せていた。「頂ければラッキー」程度の軽い気持ちだった。だが2カ月後、「投稿を見て、支援したい気持ちになりました」というメッセージと共に、お金が届いた。

 男性は3年前に離婚。同じ境遇の人たちとつながりたいと2020年1月、ツイッターのアカウントを開設した。転職をしようと会社を辞めた直後、コロナ禍がやってきた。学校が休校になり、子どもを置いて外に働きに出られない。オンラインでできる仕事は見つけられず、2020年末には貯金が尽きた。

 両親は近くに住んでいる。前の職場の同僚も、困った時は声をかけてといってくれる。でも、頼る気持ちにはなれない。「恥ずかしいし、みっともない」。自分の経済状況をさらしたくないからだ。

 行政に何度か生活保護を勧められたが、申請すれば家族に連絡が行く。窓口の職員も大体知り合い。「田舎では『何で男一人で子どもの面倒見ているの』と言われる」。離婚したことを伝えていない知人もいる。

 それがツイッターでは吐き出せる。「どこの誰かお互い知らないからこそ、何でもおおっぴらに話せるし、頼りやすいのかも」

 SNSなどを使って見知らぬ人からお金や物資の支援を募る動きは、10年ほど前から現れ始め、コロナ禍で顕著に増えた。SNS分析ツール「ブランドウォッチ」で、プロフィル欄に「欲しいものリスト」と書いているアカウントの数を集計すると、18年は2800件ほど。その後、年に1千件程度増えていたが、21年は1年間で3千件以上増え、約8200件だった。

 オンラインでの支援を後押しする動きもある。

 ネット通販大手アマゾンは20年11月、困窮者らを支援できる応援プログラムを始めた。その一つがひとり親家庭を対象にしたもので、ほしい物を登録しておくと、住所や氏名を明かすことなくプレゼントが受け取れるシステムを活用。支援団体に「児童扶養手当」の写しを提出し、子どもの学用品や食料品など計10万円分までを「ほしい物リスト」で募ることができる。特設ページにほしい物リストが一覧でまとめられ、支援したい人は、そこから購入してあげたい商品を選ぶだけだ。

仮想空間と現実空間が融合すれば人間は、もっと幸せになれる――。コロナ禍がそんな未来社会の青写真を大きく揺さぶりました。記事の後半では、ロボットと暮らし始めた76歳女性の話を紹介します。

 特に非正規雇用が多いひとり親家庭では、コロナ禍の影響が大きい。「継続的に支援できるように」と始められた。

 支援団体の一つ、「ハートフルファミリー」によると、食洗機が届けられたケースも。理事の西田真弓さんは、「現代版の『あしながおじさん』です」という。

背景には「日本社会の恥の意識」

 顔すら知らない相手と、支え合う。ネットのつながりは、困難に直面する人たちを支える「切り札」になるのか。

 英国の慈善機関「チャリティ…

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