第3回五輪で金縛り、エースが明かす舞台裏 心臓バクバク、足もつれ…

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塩谷耕吾
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 悪い夢でも見ているようだった。

 東京オリンピック(五輪)柔道男子100キロ超級準決勝。原沢久喜(29)=百五銀行=は、組み合ったルカシュ・クルパレク(チェコ)の息が上がっているのが分かった。釣り手も引き手もがっちりとつかんだ。いける――。

 だが、体が反応しない。

 一回離れて、仕切り直した。再び組み勝ち、内股を狙った。踏み込もうとした右足はしかし、ピクリとも動かなった。

 「頭では分かっていても、体が動かない。一度も技をかけられなかった」

 延長3分59秒、払い腰で技ありを奪われ、金メダルの夢はついえた。

 30分後にあったテディ・リネールフランス)との3位決定戦は戦う力は残っていなかった。延長1分4秒に反則負け。人生をかけて臨んだ大一番は、5位に終わった。

 結果の受け止めは?

 報道陣に問われ、一瞬の間があった。

 「色んな人に支えてもらい、幸せな5年間。結果で恩返しできなかったことが悔いが残ります」

 自分や周囲の期待を裏切った失望感はあった。ただこの時、原沢の脳裏にこだましていたのは、「なぜ」の疑問符だった。

 「一番大事な日に、なぜ最悪のコンディションになってしまったのか」

◇◇◇

 12月初旬、都内の柔道場で原沢に話を聞いた。宙を見据えながら、淡々と“あの日”を振り返った。

 「今思えば、なんですけど」

 兆候は7月23日、東京五輪開幕の朝からあった。

 原沢は体調管理のため、起床…

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