第6回階下の話し声、テレビ…騒音と思わない 私を団地へ導いた東京の6年

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棚橋咲月
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連載「住まいのかたち」⑥

 ステンレスのドアノブを右に回し、ゆっくり手前に引くと、鮮やかな緑色に塗られた壁が目に飛び込んでくる。

 「すげえ」

 初めて訪れた友人からはそんな反応をされる。自慢の家だけに、うれしい。

 永田優希(ゆうき)さん(24)の住まいは、半世紀前に建てられた福岡県宗像市の団地。10年前のリノベーションで内装が一新された。懐かしさと新しさ、どちらも感じられるのが好きだ。

 でも、そうでなくてもきっとここを選んでいた、と思う理由がある。

     ◇

 5歳のとき、家族旅行で東京ディズニーランドを訪れた。ステージで手を振るミニーマウスがキラキラと輝いて見えた。

 「こんなふうになりたい」。人前に立つ仕事を夢見るようになった。ダンススクールに通い、小学生のころは雑誌のモデルに応募していた。

 中学卒業とともに、俳優をめざして東京に向かった。故郷を離れる電車の窓から、「頑張れ!」と書いた垂れ幕を友人たちが田んぼで掲げているのが見えた。背中を押されているように感じた。

ある夜、目に入った団地

 けれど、東京では試練の連続…

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