第5回少女漫画家はみんなゴルゴが好き 竹宮惠子が語る「漫画界の北極星」

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太田啓之
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 日本人の文化遺産「ゴルゴ13」をあらゆる面から語り尽くそうというこの連載。今回は少女漫画界の大御所・竹宮惠子さんにご登場いただきます。一見、少女漫画の主人公とは対極にあるように見えるゴルゴのキャラクター作り、魅力の秘密とは何か。漫画家ならではの視点からの、さえ渡る分析をどうぞ!

【連載】今こそ学ぶゴルゴ13 デューク東郷の教え(全6回)

2021年9月に亡くなったさいとう・たかをさんが残した巨大な遺産にして、現代の古典である「ゴルゴ13」。ゴルゴとはいったい何者なのか。なぜ、私たちは彼に魅了されるのか。半世紀以上ぶれない彼の生き方から、今学べることは何か。プロデューサーの鈴木敏夫さん、作家の佐藤優さん、漫画家の竹宮惠子さん、「ゴルゴ13」唯一の女性脚本家・夏緑さん、最多のゴルゴ脚本を執筆してきたよこみぞ邦彦さん、「最強のゴルゴ通ライター」成田智志さんと考えます。

「見せない」ということをとても大事に

 ――「ゴルゴ13」という作品は、日本の漫画界全般を見渡した中でも、特異な位置づけにある作品ではないでしょうか。

 「ゴルゴ13」という作品だけではなく、作者のさいとう先生もそうだと思います。私が上京して小学館の雑誌「少女コミック」で連載を始めた1970年ごろ、すでに同じ小学館の「ビッグコミック」でゴルゴの連載は始まっていました。さいとう・たかを先生は「大きな出版社と対等の形でご自身の事業を展開されている方」として、漫画家仲間の間でも話題になっていました。

 ――通常、雑誌連載された漫画の単行本は同じ出版社から刊行されますが、ゴルゴの単行本は、さいとうさんがご兄弟と共に74年に立ち上げた「リイド社」が出版元になっています。それ以前から、さいとう・プロダクションではコミックの編集・出版も手がけていました。

 それを初めて聞いた時には「いや、すごいなあ」と思って。漫画家が自分で著作権を行使し、自分のお金で本を出版できるんだ、そういうやり方もあるんだ、ということを初めて知りました。

 ――ある意味、「究極の自費出版」ですね。

 大手の雑誌に掲載することで作品を多くの方々に知っていただき、単行本自体は自分の手で売る、ということができれば、それは素晴らしいことだろうな、と思いました。だけど、それを実現するのは生やさしいことではない。私自身も小さな同人誌のようなことはやってみましたけれど、やはり編集を担当する人の支えがなければ難しい。漫画制作のため、大きなプロダクションを作っている漫画家の方々もいらっしゃいますが、編集作業や本を売ることは出版社にお任せします、という方がほとんどです。

 ――なぜ、さいとうさんは独自の道を行かれたのでしょうか。

少女漫画家たちはゴルゴ13をどのように読んでいたのか? 一般的な漫画のセオリーとは異なるゴルゴの主人公像とは? 記事後半では、竹宮さんが同じ漫画家の視点からゴルゴ13の魅力について語り尽くします。

 さいとう先生は50年代末…

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