連載「住まいのかたち」⑦
窓から、雪化粧した北アルプスが見える。長野県白馬村にある家の一室で、アウトドア会社に勤める横山えりなさん(28)はノートパソコンを開いた。
ここが「きょうの住まい」だ。午後に始まったオンライン会議の冒頭、上司が尋ねた。「今週はどこにいるの?」。画面に映る同僚たちの顔がなごみ、笑い声が聞こえた。
決まった住まいは持たない。そんなアドレスホッパー生活を始めて、もうすぐ1年になる。いまは全国200カ所以上の拠点に住める定額制のサービス「ADDress(アドレス)」に登録された神奈川県秦野市の家を中心に、各地の「自宅」でテレワークする。
きっかけはコロナ禍の中での転職だった。
◇
2021年3月、アウトドア会社に中途採用された。以前は職場に近い都内の賃貸アパートから通っていたが、今度の会社ではテレワークが中心になった。
出社する必要がなくなった代わりに、家賃補助は出なくなった。月10万円の家賃を払うのは厳しい。どこででも仕事ができるなら都内に住む必要はない。
ふと思い立った。「どうせなら、いろんな場所に住んでみたい」
仕事に思わぬプラスも
転居には慣れていた。青春時…